RSウイルスは、乳幼児が感染すると重症化しやすいことで知られており、特に生後まもない時期の対策が重要です。近年、その予防策として注目されているのが、妊婦へのRSウイルス予防接種です。妊娠中に接種することで、母体で作られた抗体が胎盤を通じて赤ちゃんに移行し、生後早期の感染や重症化リスクを下げる効果が期待されています。一方で、費用負担が比較的高いことや、接種できる医療機関が限られている点、副反応への不安など、知っておくべきデメリットもあります。本記事では、RSウイルスに対する妊婦予防接種の基本から、メリットとデメリットを整理し、納得して判断するための情報をわかりやすく解説します。
RSウイルス感染症とは?
RSウイルス感染症とは、RSウイルスによって引き起こされる急性の呼吸器感染症です。主に鼻や喉に症状が出る病気ですが、乳幼児では気管支や肺まで炎症が広がることがあります。そのため、細気管支炎や肺炎といった重い呼吸器疾患の原因として重要視されています。特に生後間もない赤ちゃんは免疫機能が十分に整っておらず、症状が悪化しやすい点が特徴です。ここでは、RSウイルス感染症の基本的な性質や、感染の広がり方、流行の傾向について分かりやすく解説します。
RSウイルスの感染経路
RSウイルスは呼吸器に感染し、軽い風邪のような症状から、重い下気道感染まで幅広い症状を引き起こします。主な感染経路は、咳やくしゃみによる飛沫感染と、ウイルスが付着した手や物を介した接触感染です。例えば、感染者が触れたドアノブやおもちゃを通じて、知らないうちに体内へ入り込むことがあります。潜伏期間は一般的に2〜8日とされ、症状が出始めてから数日間は周囲にうつす可能性があります。生後数か月の乳幼児は免疫システムが未成熟なため、鼻や喉の炎症が気管支や肺へ広がりやすい傾向があります。抗体量が少ないうえ、気道が細く狭いため、喘鳴(ぜんめい:ゼーゼー、ヒューヒューとした呼吸音)や呼吸困難を起こしやすい点も注意が必要です。特に1歳未満の乳幼児では、RSウイルスによる肺炎や細気管支炎で入院に至るケースが多く見られます。
流行時期と感染しやすい年齢層
日本ではこれまで、RSウイルス感染症は秋から冬にかけて流行する病気とされてきました。しかし近年では、夏から秋にかけて患者数が増える年もあり、流行時期が多様化しています。そのため、特定の季節だけ注意すればよい病気ではなくなりつつあります。
感染者の約75%以上は1歳以下の乳幼児とされ、初めての感染は生後早い時期に起こることが少なくありません。推定では、生後1歳までに半数以上の子どもが感染を経験し、2歳までにはほぼすべての乳幼児が一度はRSウイルスにかかると考えられています。多くの場合は軽症で回復しますが、月齢が低いほど重症化のリスクが高く、特に生後6か月未満の赤ちゃんは注意が必要です。
RSウイルス感染症の現状
RSウイルス感染症は、日本だけでなく世界各地で毎年流行が見られる感染症です。特に乳幼児への影響が大きく、医療機関の受診や入院につながるケースも少なくありません。中でも、月齢の低い赤ちゃんが重症化しやすい点は、公衆衛生上の重要な課題とされています。近年は、新しいワクチンや抗体製剤の導入が進み、それに伴って流行状況や患者動向に関するデータも蓄積されてきました。ここでは、RSウイルス感染症の現在の流行状況と、入院や重症化の実態について解説します。
日本におけるRSウイルスの流行動向
日本では、RSウイルス感染症は感染症法に基づく5類感染症に指定されています。5類感染症とは、流行状況を継続的に把握するため、医療機関からの報告をもとに監視が行われる感染症のことです。RSウイルスの場合、小児科の定点医療機関からの報告を通じて、全国の発生状況が把握されています。
従来、RSウイルスは秋から冬に流行する傾向がありましたが、近年では夏から秋にかけて報告数が増加する年も見られます。このように、季節性が一定ではなくなってきている点が特徴です。厚生労働省や国立感染症研究所の公表資料でも、流行開始時期の前倒しや長期化が指摘されています。
また、国立感染症研究所の報告によると、生後1歳までに約50%以上の乳幼児がRSウイルスに初めて感染するとされています。これは、RSウイルスが非常に身近で感染力の強いウイルスであることを示しています。
参照:RSウイルス感染症|厚生労働省
参照:RSウイルス感染症 2024年現在
RSウイルスによる入院・重症化の実態
RSウイルスは、乳幼児の急性下気道感染において高い入院率を持つことが知られています。下気道感染とは、気管支や肺に炎症が及ぶ状態を指し、気管支炎や肺炎として発症することがあります。特に注意が必要なのは、生後数か月の赤ちゃんです。
日本小児科学会などの資料では、RSウイルスによる入院のピークは生後2〜5か月齢に集中すると報告されています。この時期の乳児は気道が細く、少しの炎症でも呼吸が苦しくなりやすいためです。重症化した場合には、酸素療法が必要になることもあり、状態によっては集中治療室での管理が行われます。
こうした重症例が増えると、医療機関の病床や医療スタッフへの負担も大きくなります。そのため、RSウイルス感染症は個々の家庭だけでなく、医療体制全体に影響を及ぼす感染症として位置づけられています。
参照:日本小児科学会
参照:RS ウイルス感染症
参照:令和 6 年 11 月 21 日 厚生労働大臣 福岡 資麿 殿 公益社団法人 日本小児科学会 会長 滝田 順子
妊婦へのRSウイルス予防接種が必要な理由
RSウイルスは、特に乳幼児に重い症状を起こしやすい感染症です。生後間もない赤ちゃんは免疫の働きが十分ではなく、感染すると呼吸が苦しくなることがあります。そのため、できるだけ早い段階で守ることが重要とされています。近年、妊婦が予防接種を受けることで、母体で作られた抗体を赤ちゃんに届ける「母子免疫」という考え方が注目されています。これは、生まれる前から赤ちゃんを守る方法として期待されています。ここでは、妊婦へのRSウイルス予防接種がなぜ求められているのかを分かりやすく解説します。
生後早期の赤ちゃんを守る
RSウイルスによる入院や重症化のリスクは、生後数か月の赤ちゃんで特に高くなります。この時期は気道が細く、少しの炎症でも呼吸が乱れやすいためです。また、体内で病原体と戦う免疫の働きも未発達な状態にあります。
妊婦が予防接種を受けると、体内で作られた抗体が胎盤を通じて赤ちゃんに移行します。抗体とは、ウイルスなどの侵入を防ぐ働きを持つ物質です。出生時に一定量の抗体を持っていることで、流行が始まりやすい時期を安全に過ごせる可能性が高まります。特に、まだ自分で予防接種を受けられない生後早期において、この免疫の受け渡しは大きな意味を持ちます。
これまでのRSウイルス予防法の限界
これまでのRSウイルス対策としては、乳児に対して抗体製剤を投与する方法が中心でした。抗体製剤とは、あらかじめ作られた抗体を体内に入れる治療法で、主に早産児や基礎疾患を持つ赤ちゃんなど、限られた対象に用いられてきました。そのため、すべての乳児を十分に守る方法とは言い切れない側面がありました。
一方、妊婦への予防接種は、出生するすべての赤ちゃんに抗体を届けられる可能性があります。特定の条件に左右されにくく、広い範囲で感染や重症化のリスクを下げられる点が特徴です。このような背景から、妊婦接種は個人の対策にとどまらず、社会全体の医療負担を軽減する手段としても重要視されています。
RSウイルス妊婦予防接種のメカニズム
妊婦へのRSウイルス予防接種は、母体の中で作られた抗体を胎盤を通して赤ちゃんに届ける免疫の仕組みです。生まれてすぐの赤ちゃんは、自分で病原体と戦う力が弱く、ワクチン接種もできない時期があります。その空白期間を補う方法として、妊婦接種が注目されています。出生直後から数か月のあいだ、RSウイルスから赤ちゃんを守ることが目的とされており、世界的にも導入が進んでいます。ここでは、妊婦予防接種がどのように免疫を働かせるのかを分かりやすく解説します。
妊婦が接種することで得られる免疫効果
妊婦がRSウイルスワクチンを接種すると、体内でウイルスの働きを抑える抗体が作られます。この抗体は「中和抗体」と呼ばれ、ウイルスが細胞に入り込むのを防ぐ役割を持っています。母体で増えた中和抗体は、妊娠後期を中心に胎盤を通って胎児へ移行します。
胎盤は、母親と赤ちゃんをつなぐ重要な器官で、栄養や酸素だけでなく、抗体も受け渡す働きがあります。そのため、生まれた時点で赤ちゃんの血液中に一定量の抗体が存在し、感染に備えた状態が整います。世界保健機関(WHO)では、この仕組みを「maternal immunization(母体免疫)」と位置づけており、乳児期の感染症対策として有効な方法とされています。
赤ちゃんへの予防効果が期待される期間
妊婦接種によって赤ちゃんが受け取る抗体の効果は、出生直後から数か月間続くと考えられています。特にRSウイルスによる重症化が起こりやすい、生後0〜6か月の時期をカバーできる点は大きな特徴です。この期間は、入院や呼吸管理が必要になるケースが多いため、予防の意義は高いといえます。
一方で、母体由来の抗体は時間の経過とともに少しずつ減っていきます。そのため、妊婦接種は長期間にわたって完全に感染を防ぐものではありません。ただし、最もリスクの高い時期を乗り切る助けになる点に価値があります。妊婦予防接種は、赤ちゃんの成長に合わせた段階的な感染対策の一部として理解することが大切です。
RSウイルス妊婦予防接種の有効性と安全性
妊婦向けのRSウイルスワクチンは、複数の国で行われた大規模な臨床試験の結果をもとに評価されています。特に注目されているのは、生後間もない赤ちゃんに起こりやすい重症RSウイルス感染を減らせるかどうかという点です。妊娠中に接種するワクチンであるため、母体への影響や胎児の安全性についても、慎重な検証が続けられてきました。ここでは、これまでに分かっている有効性と安全性について、分かりやすく整理します。
臨床試験で示された発症・重症化予防効果
国際的な臨床試験では、妊婦がRSウイルスワクチンを接種した場合、生後6か月未満の乳児において重症RSウイルス感染が減少したと報告されています。特に、入院を必要とする下気道感染の発生率が低下した点は重要な結果です。下気道感染とは、気管支や肺まで炎症が及ぶ状態を指し、呼吸が苦しくなる原因になります。
このワクチンの特徴は、感染そのものを完全に防ぐというより、重症化を防ぐことに重点が置かれている点です。RSウイルスは感染力が強く、軽い症状で済むケースも多いため、医療現場では重い症状をどれだけ減らせるかが重視されています。その意味で、入院や集中治療につながるケースを減らせる可能性が示されたことは、実用面で大きな意義があるといえます。
報告されている副反応とその頻度
妊婦における副反応として報告されているものは、比較的軽い症状が中心です。多く見られるのは、注射をした部位の痛みや腫れ、体のだるさ、軽い発熱などです。これらは、他の予防接種でもよく見られる反応で、数日以内に自然に治まるケースがほとんどです。
臨床試験の結果では、重い副反応はまれとされており、特別な治療を必要とする事例は多くありませんでした。また、胎児に対する重篤な有害影響は確認されていないと報告されています。ただし、妊娠中の体調や持病によって感じ方には個人差があります。そのため、接種を検討する際には、医師と十分に相談し、自身の状況に合った判断をすることが大切です。
RSウイルス妊婦予防接種の課題
RSウイルス妊婦予防接種は、生後早期の赤ちゃんを守る新しい予防の考え方として注目されています。一方で、制度や環境がまだ十分に整っているとは言えず、普及に向けていくつかの課題が残っています。特に、接種できる場所の限られ方や費用負担、情報の伝わりにくさは、多くの妊婦が不安を感じやすい点です。ここでは、RSウイルス妊婦予防接種を取り巻く現状と、今後解決が求められる課題について整理します。
接種できる医療機関が限られている
妊婦向けのRSウイルスワクチンは、まだ導入が始まったばかりの段階にあります。そのため、すべての産婦人科や医療機関で接種できる状況にはなっていません。ワクチンの取り扱い体制や保管条件、説明体制の準備が整っていない施設もあり、導入には時間を要しています。その結果、住んでいる地域によって接種のしやすさに差が生じる可能性があります。都市部では対応医療機関が見つかりやすい一方、地方では選択肢が限られるケースも考えられます。妊婦自身が情報を探し、接種可能な医療機関を確認しなければならない点は、現時点での大きな負担といえるでしょう。
費用負担と公的助成の課題
RSウイルス母子免疫ワクチンである「アブリスボ®」は、現時点では任意接種が中心です。日本では2026年度から妊婦を対象とした定期接種が予定されていますが、2025年12月時点では公費での全国一律の助成制度は整っていません。そのため、多くの場合は自己負担での接種となります。
1回の接種は筋肉注射で行われ、費用の目安は2〜3万円程度とされています。一部の自治体では独自に支援を行っており、例えば、愛知県尾張旭市では妊娠24〜36週の妊婦を対象に助成が実施しています。また、京都府や愛知県の一部地域では、全額または半額補助が行われている例もありますが、全国で統一された制度ではありません。
情報不足や誤解が生じやすい
RSウイルスに対して、「ただの風邪」といった認識が今も根強く残っています。確かに軽症で済む場合もありますが、乳幼児では重症化しやすく、入院が必要になることもある感染症です。この認識の差が、予防の必要性を伝えにくくしています。
また、妊婦が接種することで赤ちゃんを守るという仕組み自体が、まだ十分に知られていません。母体免疫という考え方は専門的に感じられやすく、正確に理解されないまま不安だけが先行することもあります。そのため、信頼できる一次情報、つまり医療機関や公的機関が発信する情報に触れることが重要です。正しい知識が広がることで、妊婦自身が納得して選択できる環境づくりが求められています。
RSウイルスから赤ちゃんを守るための対策
RSウイルスへの対策は、妊婦予防接種だけで完結するものではありません。ワクチンは大切な予防手段の一つですが、日常生活の中での感染対策と組み合わせることで、より高い効果が期待できます。特に赤ちゃんが生まれる前後は、妊婦本人だけでなく、家族全体の意識が重要になります。ここでは、家庭で実践しやすい対策や、新生児期に注意したいポイントについて解説します。
妊婦予防接種と併せて行う妊婦の感染対策
妊婦ができる基本的な感染対策として、まず意識したいのが手洗いと手指消毒です。外出後や食事前、帰宅時には石けんを使って丁寧に手を洗うことで、ウイルスの持ち込みを減らせます。アルコール消毒も有効ですが、手洗いと併用することが大切です。
また、人混みへの不要な外出を控えることも重要です。特にRSウイルスの流行時期には、ショッピングモールや混雑した公共交通機関で感染リスクが高まります。体調や用事に応じて外出の頻度を調整する意識が役立ちます。
さらに、咳や鼻水などの症状がある家族との接触には注意が必要です。完全に避けることが難しい場合でも、マスクの着用や距離を保つことで、感染の可能性を下げることができます。妊婦自身が体調管理を意識することが、赤ちゃんを守る第一歩になります。
家族全体で意識したい予防行動
RSウイルス対策は、妊婦一人の努力だけでは不十分です。特に上の子がいる家庭では、保育園や学校からウイルスを持ち帰る可能性があります。そのため、帰宅後の手洗いを習慣づけ、咳やくしゃみをする際は口と鼻を覆う「咳エチケット」を徹底することが大切です。
家庭内では、タオルの共有を避けることも有効です。洗面所やトイレ、キッチンでは、個人ごとにタオルを分けるだけでも接触感染のリスクを下げられます。見落とされがちですが、日常的な工夫として取り入れやすい対策です。
家族が体調を崩した場合には、新生児への接触を控える判断も必要になります。無理に抱っこや世話を続けるより、別の家族が対応することで赤ちゃんを守れます。家族全員が同じ意識を持つことが、家庭内感染を防ぐ鍵になります。
出産後・新生児期に注意すべきポイント
出産後の新生児期は、RSウイルス感染に特に注意が必要な時期です。赤ちゃんの呼吸が苦しそうに見える、呼吸の回数が極端に増えるといった様子が見られた場合は、早めに医療機関を受診することが重要です。
また、母乳やミルクの飲みが悪くなる、授乳量が明らかに減るといった変化も注意すべきサインです。加えて、呼吸が一時的に止まる「無呼吸」と呼ばれる状態が見られる場合は、重症化の可能性があります。このような症状があるときは、自己判断せず、専門家に相談することが欠かせません。赤ちゃんの体調変化は小さく見えても、急に悪化することがあります。迷ったときは医師や助産師に相談する姿勢が、結果的に赤ちゃんを守ることにつながります。
妊婦と家族が利用できる支援・相談先
妊娠中や出産前後は、赤ちゃんの健康について不安を感じやすい時期です。RSウイルスに関する対策を考えるうえでは、正確な情報と専門家からの助言を得ることが欠かせません。インターネット上には多くの情報がありますが、信頼できる公的な情報源を活用することが安心につながります。ここでは、妊婦と家族が利用しやすい支援や相談先を紹介します。
医療機関
RSウイルスや予防接種について不安がある場合、最初の相談窓口となるのは産婦人科です。妊娠週数や体調を把握している産婦人科医は、妊婦一人ひとりに合った助言を行ってくれます。予防接種の時期や注意点についても、具体的に相談できます。
必要に応じて、小児科専門医と連携する体制が取られることもあります。小児科専門医とは、赤ちゃんや子どもの病気を専門に診る医師のことです。出産後の赤ちゃんへの影響が心配な場合でも、医師同士が情報を共有することで、より適切な対応が期待できます。迷ったときは、早めに医療機関へ相談することが大切です。
自治体・公的機関
公的な情報を得たい場合は、厚生労働省や国立感染症研究所が発信する内容が参考になります。これらの機関では、RSウイルスの流行状況や予防に関する基本的な考え方を分かりやすく紹介しています。公式情報は内容の正確さが重視されているため、判断材料として役立ちます。
また、住んでいる地域の自治体にある母子保健窓口も相談先の一つです。母子保健窓口では、保健師などが妊娠中や育児に関する相談に応じています。保健師とは、地域で健康を支える専門職です。医療機関に行くほどではない不安でも、気軽に話を聞いてもらえる点が安心につながります。
RSウイルス妊婦予防接種に関するよくある質問
RSウイルス妊婦予防接種については、「いつ受けるのがよいのか」「本当に安全なのか」など、さまざまな疑問を持つ方が少なくありません。ここでは、妊婦や家族から特によく寄せられる質問を取り上げ、一つひとつ分かりやすく答えていきます。
妊娠何週頃に接種するのが適切ですか?
RSウイルス母子免疫ワクチン(アブリスボ筋注用)は、妊娠24週から36週の間に接種できます。なかでも妊娠28週から32週頃に受けると、赤ちゃんへの抗体移行が十分に期待でき、重症化を防ぐ効果が高いとされています。抗体とは、体の中でウイルスと戦うために作られる防御成分です。日本小児科学会でも、妊娠24〜36週(特に28〜36週)での接種が推奨されています。早産の可能性がある場合は、24週以降で早めに相談すると安心です。接種は1回の筋肉注射で、医療機関での予約が必要になります。
すべての妊婦が接種できますか?
原則として、妊娠24〜36週で体調が安定している妊婦が対象です。ただし、すべての方が必ず接種できるわけではありません。たとえば、37.5℃以上の発熱がある場合や、重い急性の病気にかかっている場合は見送られます。また、ワクチン成分に対して強いアレルギーを起こしたことがある方も注意が必要です。血小板減少症や免疫の病気、心臓・肝臓・腎臓の持病がある場合も、事前に医師へ相談することが大切です。不安がある場合は、自己判断せず医療機関で確認しましょう。
副反応が出た場合、赤ちゃんへの影響は?
報告されている副反応の多くは、注射した部分の痛みやだるさ、軽い発熱などです。これらは一時的なものが中心で、数日以内に落ち着くことがほとんどです。これまでの臨床試験では、重い副反応や胎児への深刻な影響は確認されていません。もちろん体調の変化には注意が必要ですが、何か気になる症状があれば、早めに医師へ相談することで安心につながります。
予防接種を受ければRSウイルスは完全に防げますか?
妊婦予防接種は、RSウイルス感染を完全に防ぐものではありません。このワクチンの主な目的は、赤ちゃんが感染した場合でも重症化を防ぐことにあります。重症化とは、呼吸が苦しくなり入院が必要になる状態を指します。接種後も、手洗いや周囲の感染対策を続けることが大切です。予防接種は、あくまで対策の一つとして考えるとよいでしょう。
現在使用されているワクチンの種類は何ですか?
日本国内で妊婦向けに承認され、使用されているRSウイルスワクチンは、ファイザー社の「アブリスボ(Abrysvo)」です。このワクチンは、妊婦の体内で作られた抗体を胎盤を通じて赤ちゃんに届ける仕組みになっています。胎盤とは、妊娠中に赤ちゃんへ栄養や酸素を送る器官です。この働きにより、生後まもない赤ちゃんがRSウイルスにかかった場合でも、重い症状を起こしにくくなると考えられています。
まとめ
RSウイルスは、乳幼児が感染すると重い症状につながることがあるため、早期の対策が欠かせません。妊婦予防接種は、母体で作られた抗体を赤ちゃんに届け、生後まもない時期の重症化を防ぐ有力な方法です。一方で、接種の時期や体調による注意点もあります。正確な情報をもとに、産婦人科医などの専門家と相談しながら、自分に合った選択をすることが大切です。
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