近年、心と身体の健康だけではなく、社会的繋がりや生きがいにも注目が集まっています。そんな中、近年ウェルビーイングという言葉を耳にする機会が増えました。
働き方や教育の概念が大きく様変わりしようとしている昨今、一人ひとりがより良く生きるためのヒントとして、ウェルビーイングは世界的に注目されています。本記事では基本的な意味から、日本と世界の現状、そして企業の導入事例や導入することによるメリット・デメリットまで分かりやすく解説します。
ウェルビーイングの考え方が全世界に広まれば、すべての人が豊かに暮らせる社会が実現できます。
ウェルビーイングとは？
ウェルビーイングとは、よいという意味合いを持つwellと状態という意味のbeingを組み合わせた言葉です。簡単に和訳すると、よい状態であるという意味合いになります。
1946年にWHO（世界保健機関）が設立され、ウェルビーイングという考え方がはじめて登場しました。WHOは世界中の人々が最高の健康水準に達することを目的として設立された機関です。
WHOが定義する健康とは、私達が一般的に認識している肉体的・精神的に健康であるという状態だけではありません。社会的にも満足度が高い状態にあることで、はじめてWHOが定義する健康が実現されます。
そして、2021年にはヘルスプロモーション用語集において、日常生活の資源のひとつとしてウェルビーイングを定義付けしました。全世界には価値観・考え方が大きく異なる多種多様な人々が暮らしています。
世界中の人々が最高の健康水準を達成するというWHOの目的を達成するには、ウェルビーイングの推進が必要不可欠なのです。
ウェルビーイングの5つの定義
ウェルビーイングを達成するためには指標が必要であることはいうまでもありません。ウェルビーイングにはギャラップ社が定めた定義とPERMA理論によって定められた定義が有名です。それぞれの定義がどのような項目を掲げているのかを以下で詳しく解説します。
ギャラップ社の定義
ギャラップ社は2010年にウェルビーイングに関するレポートを提出し、ウェルビーイングを高めるためには5つの要素が重要であるとしています。
- キャリアウェルビーイング
- 社会ウェルビーイング
- 経済ウェルビーイング
- 身体的ウェルビーイング
- コミュニティウェルビーイング
5つの定義のどれかひとつが突出している状態というのはあまり好ましい状態ではなく、バランスよく満たされていることではじめて個人が幸福度や満足度を実感できるとしています。それぞれの要素については、以下で詳しく解説します。
キャリアウェルビーイング
仕事を含めた自分で選んだキャリアに対する満足度や達成感を示す要素です。5つの要素の中でももっとも重要だと定義していて、キャリアに対しての満足度が高い人は、そうでない人と比べて2倍以上人生の豊かさを感じているという研究結果も出ているほどです。
社会ウェルビーイング
人間関係や社会に対しての繋がりに対する満足度を示す要素です。社交的な行動を1日1時間できれば、幸福を感じてストレスが減るとされています。
逆に人や社会との繋がりが一切ない人は満足度が非常に低い傾向にあり、特に精神的に悪影響を受けます。うつ病など精神的疾患の発症率が高まり、孤独な人はそうでない人と比べて自殺リスクも非常に高いです。
経済ウェルビーイング
経済的な安定や満足度・安心感を示す要素です。単純に収入が多いということよりも、プレゼントを贈るなど他人のためにお金を使ったり寄付をしたりしたほうが幸福を感じやすいです。
また、物を買うよりも旅行など体験にお金を使うほうが経済的な満足度を高めやすいことも分かっています。
身体的ウェルビーイング
身体的な健康状態や運動・睡眠に関する満足度を示す要素です。
適度な運動や、十分な睡眠を取ることで身体的満足度を高めることが可能です。
コミュニティウェルビーイング
地域社会への貢献度や地域コミュニティに対しての満足度です。例えば、献血をすると自分は良いことをしたと幸せな気分になる人は多いのではないでしょうか。
献血によって満足度が満たされている時は、自分が社会に貢献できていると実感する瞬間です。
PERMA理論の定義
PERMA理論とは、アメリカの心理学者であるマーティン・セリグマン博士らが提唱した理論です。PERMA理論のPERMAは、以下の5つの言葉を英訳したときの頭文字を取った造語で、5つを満たしている人は高い満足度を実感している状態だとしています。
- ポジティブな感情
- 何かへの没頭
- 他者との関係性
- 生きる意味
- 達成
PERMA理論でもギャラップ社の定義と同じく、5つの項目がバランスよく満たされた状態となっているとき、人は高い満足度を実感できると定義しています。ギャラップ社の5つの定義と同じく、それぞれの項目については以下で詳しく解説します。
ポジティブな感情
楽しみ、喜び、感謝などのポジティブな感情を経験することで幸福を感じるという定義です。大切な人と過ごす・趣味など楽しめる活動をすることが、満足度を高めるのに有効な方法です。
何かへの没頭
時間を忘れて興味を持っていることに没頭している人は満足度が高いという定義です。趣味に対しては、誰しも時間を忘れて没頭し、その間はとても満たされた状態になるのではないでしょうか。
そのほか、仕事で自分の強みを発揮する機会を設けるのも有効です。
他者との関係性
良好な人間関係を築いて人との繋がりを持つことで、社会的に満足度を感じられるという定義です。他者とはパートナー・友人・家族・会社の同僚や上司だけではなく、身近にあるコミュニティーも対象となります。
生きる意味
自分の活動や自分の人生に意味や目的を見出すことで幸福を感じるという定義です。生きる意味を見出すことで挑戦したり逆境を乗り越える時の活力を生み出せます。
達成
何かしらを達成したり、達成するための努力をすることで満足度を感じるという定義です。目標を設定し、達成することで自信を持つきっかけになります。
自信を持てれば、さらに高い目標を達成するための活力となり、さらに満足度を高められるでしょう。具体的かつ現実的で努力すれば達成可能な目標を掲げるのが、満足度を高めるためのコツです。
ウェルビーイングが注目されている背景
ウェルビーイングは近年世界的にも注目されています。まだ日本ではなじみがあまりない言葉ですが、近い将来日常的に使われる言葉になっていく可能性は高いです。
世界的になぜ注目されている背景を詳しく解説します。
新型コロナウイルスの流行
新型コロナウイルスの流行前と流行語で社会様式は大きく変化しました。例えばコロナ禍を機に、飲食店ではスタッフの多くがマスクを着用して接客をするようになっています。
生活様式だけではなく、幸福度に関しての考え方もコロナウイルス以降代わりつつあります。流行が始まった2020年度は感染を予防するために極力人と接触しないような生活が推奨されました。
孤独を強いられる生活の中で、人々はそれまでの生活様式を見直し、本当の健康について考えるようになります。コロナ禍が終わってからも、自分にとって本当の健康を実現するための生活を求める考え方が定着し、ウェルビーイングは大きな注目を集めるようになりました。
働き方改革推進に繋がる
コロナ禍によって大きく様変わりしたことに働き方があります。ソーシャルディスタンスを実現するため、企業ではリモートワークやAIの導入を積極的に進めています。
労働環境が変化すると同時に長時間労働の是正・有給休暇取得の義務化・女性の雇用拡大など、働き方そのものの変革も実施されるようになりました。企業がウェルビーイングを達成するよう努めれば、自然とワークライフバランスが整った職場環境になり、働き方改革推進に繋がります。
働き改革の進行度を示す指標のひとつにリモートワークの普及率がありますが、日本ではコロナ禍中にリモートワーク率が上昇したものの、その後は減少傾向にあるのが現状です。2024年3月時点でリモートワーク実施率は17.0％であり、先進国のなかではかなり低い値です。
価値観の多様化
近年は価値観の多様化が重要視されるようになってきています。多様性が認められる社会を実現するためには、さまざまな考え方の人々を受け入れる社会となる必要があります。
ウェルビーイングを実現するような社会にしていけば、すべての人々が心身ともに満足していると実感できるような状態を維持できます。
SDGsで目標のひとつとして掲げている
現在世界的に実現を目指しているSDGsの指標のひとつに、ウェルビーイングが含まれています。SDGsでは17の目標を掲げていますが、3つ目の指標に「すべての人に健康と福祉を」とあります。
英訳すると「Good Health and Well-Being」となり、指標のひとつになっていることが分かるのではないでしょうか。
日本と世界のウェルビーイングの現状
ウェルビーイングは世界共通の目標のひとつであり、注目度は年々上昇していることが分かりました。ウェルビーイングの普及度を示す指標となる調査のひとつに毎年実施されている世界幸福度調査があります。
世界幸福度調査では以下の6項目を数値化して幸福度の高さを導き出しています。
- 1人当たりの国内生産量（GDP）
- 社会的支援
- 健康寿命
- 人生選択の自由度
- 寛容さ
- 汚職・腐敗の認知度
2025年度の調査では147カ国が調査対象となり、調査結果で1位となったのはフィンランドでした。フィンランドは今回の1位で8年連続首位を達成しています。
2位以降はデンマーク・アイスランドと北欧やヨーロッパの国が続き、10位にメキシコという結果でした。
日本は何位かというと55位で、かなり低いと言わざるを得ません。本項目では日本と世界、それぞれのウェルビーイングへの取り組みを解説します。
参考元：2025年世界幸福度ランキング 日本は55位、前回から4ランク下がる トップはフィンランド8年連続（nippon.com） – Yahoo!ニュース
日本の現状
日本では政府・自治体・企業とウェルビーイングに対する取り組みをしているところは多岐に渡ります。政府は2019年度より国民の生活満足度調査を実施し、国民の生活満足度の把握に努めています。
令和6年度に実施した生活満足度調査によると、今の生活に満足と答えた人は52.0%いる一方で、47.4%の人が不満だという回答でした。
参考元：令和6年度国民生活満足度調査
各自治体でも地域住民が幸福度を感じるための社会を作り出す取り組みを進めていて、福岡市では従業員のウェルビーイングに取り組む企業を登録する「福岡市Well-being＆SDGs登録制度」を実施中です。登録された企業は市のホームページで紹介されるほか、市の融資制度を使った時に金利が優遇されます。
世界の現状
海外ではウェルビーイングに対してどのような取り組みを進めているのでしょうか。世界幸福度調査8年連続1位のフィンランドでは、ウェルビーイングの考えを早くから国の基本原則として取り入れています。
小学校から大学までの教育費が無償であるほか、特に女性の社会進出を積極的に推し進めているのが大きな特徴です。2019年のデータですが、国会議員の47%が女性であり、同年は女性が首相を務めていました。
また、ワークライフバランスの改善にも力を入れています。2020年時点で女性従業員の約90%、男性従業員の約75%が育児休暇を取得していて、日本の男性育児休暇取得率が約30%に留まっているのと比べると、フィンランドが国民の幸福度が高い国になっているのものも納得です。
参考元：「世界一幸福な国」と言われるフィンランド その根幹にある「ウェルビーイング」の思想を探る 学び多きフィンランド
教育現場でのウェルビーイングの取り組み事例
ウェルビーイングは教育現場でも重要視されています。生徒・教師・学校全体が心身ともに健康で幸福を感じている状態が維持できれば、質の高い学びが得られることでしょう。
ウェルビーイングが高い学校は保護者からの信頼度も高くなり、良好な関係が築けます。学校生活における大きな問題のひとつであるいじめも、ウェルビーイングの高い学校では滅多に発生しません。教育現場におけるウェルビーイングの具体的な事例のひとつに、生徒の主体性を尊重する授業の実施があります。
近年では生徒同士でひとつのテーマについて考えたり議論したりするグループ学習や、プレゼンテーション活動などを授業のカリキュラムに取り入れる学校が増えてきています。また、地域住民と交流する機会を設け、連携して地域を活性化させることで社会性や地域への関心を高める活動も、教育現場でのウェルビーイング推進の一貫です。
福祉の現場でのウェルビーイングの取り組み事例
心身ともに満たされた状態を維持するための活動として、福祉を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか。福祉とウェルビーイングは目指す場所そのものは同じですが、活動の対象が大きく異なります。
福祉は経済的に困難な人や障害を抱えている人など、手厚い支援を必要とする人が主な活動対象です。一方、ウェルビーイングは手厚い支援の是非は関係なく、すべての人が対象となっています。
福祉現場におけるウェルビーイングの事例としては、身体障害者の就労支援が挙げられます。一般の人と同じように働けない人でも就職して仕事ができる場を提供できるように企業側に働きかけを行ったり、就職で有利になる資格の取得や技術を学ぶ機会を設けるなどが主な取り組みです。
ウェルビーイングを会社で取り入れるメリット・デメリット
ウェルビーイングの考えを積極的に取り入れる企業が増えてきているのは、紛れもない事実です。ただし、ウェルビーイングにはメリットだけではなくデメリットもあります。
導入を検討しているなら、メリット以上にデメリット部分を理解しておかなければ、従業員の満足度が上がるどころか逆に下がってしまうことにもなりかねません。
メリット
ウェルビーイングを導入することで会社側が得られるメリットは以下の3つです。
- 生産性向上
- 離職率低下
- 優秀な人材を確保できる
3つの項目を見ても分かる通り、特に人事面でのメリットが大きいです。特に日本は少子高齢化による労働人口の減少が確実視されています。
企業が安定した運営を継続するには、ウェルビーイングの導入がある意味必須となっているのです。
生産性向上
ウェルビーイングを推し進めて社員の幸福度が上昇すると、働く意欲が増すため生産性の向上に繋がります。厚労省が公表しているデータでも、顧客満足度しか重視していない会社より、従業員の満足度も重視している会社のほうが生産性が増加するという結果が出ています。
離職率低下
ウェルビーイングが高い企業は離職率も低いです。前職を離職した人に厚労省がアンケートを取った結果、理由はさまざまですが、特に人間関係・収入面・労働時間や休日などの労働条件など、職場環境や待遇面を離職の理由に挙げる人がとても多いです。
ウェルビーイングを高めるためには職場環境を常に改善しておかなければなりません。長時間労働の慢性化の是正や、仕事の成果に応じた報酬制度を整備することで社員の満足度や幸福度が高まり、離職者の現象に繋がります。
優秀な人材を確保できる
ウェルビーイングを高めることで、優秀な人材の確保に繋がります。労働人口が年々低下している日本では、職を求めている人が優位な立場にあることは否定できません。
業種にもよりますが、人材の量・質ともに確保できていないと答える企業は年々増加傾向にあります。特に飲食業界では70％以上の企業がじい剤不足を感じていると回答しており、事態はかなり深刻です。
優秀な人材は、自分が働きがいを感じるところや成果に見合った報酬を提供してくれる企業を選びます。企業が維持・成長していくにはウェルビーイングの導入が必須だといえるでしょう。
デメリット
ウェルビーイングは会社の成長には必要ではあるものの、いくつかのデメリットがあることは事実です。特に以下の3つのデメリットには注意しなければなりません。
- 運用コストの負担が大きい
- 効果測定が難しい
- 利益追求の経営方針とは相性が悪い
それぞれのデメリットについて、以下で詳しく解説します。
運用コストの負担が大きい
ウェルビーイングの向上には社員の職場環境改善が必須ですが、実現にはかなりの出費を伴います。従業員のメンタルケア・健康管理のためのプログラムの構築などを導入するための費用をトータルすると、中小企業にとっては導入が困難だと感じることもあるでしょう。
企業として優先すべき項目をピックアップし、高い効果か見込めるものから順次取り入れることで、コストを分散させられます。
効果測定が難しい
効果判定が難しいのも、ウェルビーイング導入におけるデメリットのひとつです。例えば売り上げを5%アップさせるという目標であれば、数字で結果をすぐに判断できます。
ところがウェルビーイングは肉体的・精神的な充実を目指す活動なので、結果を数字で測れるものではありません。また、売り上げのようにすぐ効果が出るものではなく、効果を実感するまでには少なくとも数年の日数を要することでしょう。
ウェルビーイング導入の効果を実証するには、定期的なデータ収集以外に専門家や外部機関に調査を依頼して客観的に判断してもらう必要があります。
利益追求の経営方針とは相性が悪い
ウェルビーイング重視の経営は利益を追求した経営方針との相性が悪いです。ウェルビーイングは、どちらかと言えば社員の働きやすさ向上を重視しています。
ウェルビーイングを導入するにはかなりのコストがかかりますが、コストをかけたからといって利益向上に必ずしも繋がるとは限りません。しかし、ウェルビーイングの向上は生産性向上・人材確保といったメリットがあるので、長い目で見れば利益アップを目指せることも確かです。
日本企業のウェルビーイングの取り組み事例
日本企業は社員のウェルビーイング実現に向けてさまざま取り組みを実施しています。本章では、大手3社の取り組み事例を紹介します。
日本マクドナルド株式会社
日本マクドナルドでは、社員のライフスタイルの変化に対応できるように、勤務時間を柔軟に変更できる仕組みを構築しています。また、子育て中の女性が負担なく働けるように育児時短勤務制度を導入しており、お子さんが小学校を卒業するまで利用可能です。
また、キャリアアップを目指すスタッフを公募するなど、社員がスキルアップしやすい環境も整えられています。
ANA
ANAは特に人材に関するウェルビーイングに力を入れています。兼業・副業の推進、客室乗務員に向けて短日数勤務の制度などがあります。
また、外部への出向も推進しているなど、従来の考え方に縛られない働き方が実現できる会社です。
任天堂
任天堂では、社員が力を最大限に発揮できる環境を目指しています。男性社員の育児休業取得の推進や、出退勤時間をコントロールできる制度の導入など、ライフスタイルに合わせた働き方が可能です。
また、座りすぎ防止のラジオ体操の実施や心身の不調を気軽に相談できる健康相談室など、社員が健康に働くための仕組み作りにも取り組んでいます。
トヨタ自動車株式会社
日本のトップ企業であるトヨタ自動車株式会社もウェルビーイング活動を積極的に行っている企業の一つです。すべての社員が充実した不安のない人生を送れるよう、80ヶ所の社員寮を設けるなど福利厚生・職場環境・ダイバーシティ・人材育成など各方面で重量員をサポートしています。
結婚をサポートする恋活プログラムなど、ユニークな取り組みを実施している企業でもあります。
ロート製薬株式会社
ロート製薬では特に社員の：健康促進のためのウェリビーイング活動が盛んです。ロート製薬では従業員の健康意欲を高めるため、ARUCOという健康社内通貨を設定しました。
ARUCOは歩行など健康的な行動をすることで貯まり、貯まったARUCOはヘルシーランチや健康グッズ、更にはARUCO休暇という休日を取得可能です。
海外企業のウェルビーイングの取り組み事例
日本企業と同様に、海外企業のウェルビーイングの取り組み事例についても紹介します。
IKEA
IKEAは世界幸福度の上位常連であるスウェーデンの企業です。IKEAのウェルビーイングの取り組みとして代表的なのが男女共同参画の実施です。
IKEAでは理事会や委員会のメンバーの性別を男女均等にして、双方の意見が反映されやすい環境になっています。また、LGBTQ+の人に対しても一般の人と同じように働ける職場環境を整え、すべての人に平等な機会を提供することを目標に掲げています。
マッコーリー・グループ
マッコーリー・グループはオーストラリアに本社を置く投資銀行です。特に従業員家族に対するサポートが手厚く、育児休暇取得の推進はもちろん産後の女性が職場復帰するための支援も充実しています。
マッコーリー・グループ全体における育児休業後の復職率は97%と非常に高いです。
社員のウェルビーイングに積極的に取り組んでいる企業として特に有名なのがGoogleです。さまざまな取り組みを実施しているGoogleですが、ここでは1ON1という取り組みを紹介します。
1ON1は文字通り1対1という意味で、2週間に1度の頻度で社員とマネージャーが1対1で面談を行います。面談では普段の業務を確認しつつ、悩みや良かったこと、今後のキャリアなどを話し合います。
定期的に自分の気持ちを聞いてもらうことで心理的負担が軽減され、良好な関係の構築に役立っています。
ウェルビーイングに関するよくある質問
ウェルビーイングに関して、よくある質問を5つピックアップして紹介します。
ウェルビーイングとは何ですか？
ウェルビーイングとは心身ともに満たされた状態を表す概念です。身体的に健康なだけではなく、精神的・社会的にも幸福を感じる状態を維持していればウェルビーイングが高いと判断されます。
なぜウェルビーイングが注目されるようになったのですか？
国の豊かさを示す指標にGDPがありますが、GDPは国の生産量の高さを示す値であり、生活の豊かさや人々の幸福度を示す指標としては不十分でした。そこで、国の豊かさを示す指標として注目されるようになったのがウェルビーイングです。
日本のウェルビーイングの現状は？
日本はGDPで見れば世界屈指の高い水準を誇っていますが、ウェルビーイングの基準で見ればかなり低いのが現状です。特に経済的な発展を遂げているにも関わらず、国民の生活満足度が一切上昇しないのが日本が抱える大きな課題だとしています。
ウェルビーイングを達成するため、政府だけではなく、自治体・教育分野・企業などさまざまな分野でウェルビーイングの考え方が広まりつつあります。
企業がウェルビーイングを導入するメリットとは？
企業がウェルビーイングを推し進めれば社員の会社に対する満足度が上昇します。その結果、生産性向上・離職率低下・優秀な人材を確保できるといったメリットが得られます。
また、ウェルビーイングを推進している企業は社会的にも優れた企業だと認められるため、取り引き先などに対してのアピールにも繋がります。
ウェルビーイング導入にデメリットはないの？
ウェルビーイングは導入に資金面・精神面で多大なコストがかかる点が最大のデメリットです。また、売上などと違って目に見えて効果が実感しづらいうえに、効果が出ているかの判断も難しいです。
まとめ
ウェルビーイングはよい状態であることを表す概念です。豊かさを表す指標として近年世界的に注目され、ウェルビーイングを目標のひとつに掲げる国が非常に増えてきました。
日本は経済的には豊かであるものの、国民の生活満足度や幸福度がかなり低いのが現状です。そのため政府・自治体・企業・教育機関などさまざまな分野でウェルビーイングが推進されており、本当の意味で豊かな社会を構築するための取り組みが進められています。
多様化が進行している現在の社会において、すべての人が幸福を感じられる世界にするためには、ウェルビーイングの推進は必要不可欠といえます。