ジェンダーレスという言葉を聞いたことはあるけれど、「LGBTとは何が違うの?」「自分の感覚は変じゃない?」と思う方も多いのではないでしょうか。ジェンダーレスとは、性別の枠組みに縛られない考え方で、自分らしさを大切にする生き方です。一方で行き過ぎた取り組みは男女間の違いを否定し、社会的な負担となる可能性があります。
近年、世界中で多様性が認められる中、日本でも政府・自治体・企業が積極的な取り組みを始めています。この記事では、ジェンダーレスの基本的な意味からLGBT・ジェンダーフリーとの違い、ジェンダーレス男子・女子の特徴、世界と日本の現状、注目される背景、そして具体的な取り組み事例まで、あなたの疑問に答える情報を分かりやすく解説します。
ジェンダーレスとは
近年、性別による固定観念から解放された生き方を表す「ジェンダーレス」という言葉が注目を集めていますが、その正確な意味や関連する概念との違いについて、まだ十分に理解されていない面があります。この章では、ジェンダーレスの基本的な概念を明確にするとともに、よく混同されがちなLGBTやジェンダーフリーとの違い、そしてジェンダーレス男子・女子と呼ばれる人々について詳しく解説していきます。
ジェンダーレスとLGBTとの違い
ジェンダーレスとLGBTは、どちらも性に関する概念ですが、その意味や対象とする範囲が大きく異なります。ジェンダーレスは、社会的・文化的な性別(ジェンダー)の枠組みや役割分担にとらわれない考え方を指します。これは、「男性だから力仕事をすべき」「女性だから家事が得意なはず」といった固定観念から自由になり、個人の特性や希望に基づいて行動することを重視する概念です。
一方、LGBTは「Lesbian(レズビアン)」「Gay(ゲイ)」「Bisexual(バイセクシュアル)」「Transgender(トランスジェンダー)」の頭文字を取った言葉で、性的指向や性自認に関する多様性を表現しています。LGBTは主に「誰を好きになるか」という性的指向と、「自分の性別をどう認識しているか」という性自認に焦点を当てた概念です。
つまり、ジェンダーレスは「性別による社会的な役割や表現の自由」を求める考え方であり、LGBTは「性的指向や性自認の多様性」を表す言葉という違いがあります。ジェンダーレスな考え方を持つ人が必ずしもLGBTに該当するわけではなく、逆にLGBTの人がすべてジェンダーレスな価値観を持っているわけでもありません。
両者は重なる部分もありますが、それぞれが扱う領域や焦点が異なることを理解することが、多様性を受け入れる社会を築く第一歩となります。
ジェンダーレスとジェンダーフリーの違い
ジェンダーレスとジェンダーフリーは、似た言葉として混同されがちですが、実は異なる概念です。ジェンダーレスは、性別による区別や分類そのものをなくし、「男性的」「女性的」という概念にとらわれない状態を指します。例えば、ファッションにおいて男性用・女性用という区分けをせず、誰もが自由に選べるようにすることや、性別を問わない制服の導入などが該当します。
ジェンダーレスは「性別の概念を超越する」という意味合いが強く、性別という枠組み自体を意識しない、あるいは重要視しない考え方です。一方、ジェンダーフリーは、性別による差別や偏見をなくし、男女が平等に活躍できる社会を目指す考え方です。これは、性別の存在は認めつつも、それによって生じる不平等や固定観念を取り除くことに重点を置いています。例えば、職場での男女の賃金格差をなくすことや、育児・家事の分担を性別に関係なく行うことなどが、ジェンダーフリーの実践例です。
つまり、ジェンダーレスは「性別という概念そのものを意識しない」アプローチであるのに対し、ジェンダーフリーは「性別は存在するが、それによる不平等をなくす」アプローチという違いがあります。この違いを理解することは、多様性を尊重する社会を築く上で重要です。どちらの考え方も、個人が自分らしく生きることを支援する目的は同じですが、そのアプローチが異なることを認識しておく必要があります。
ジェンダーレス男子・ジェンダーレス女子とは?
ジェンダーレス男子・ジェンダーレス女子とは、従来の性別に基づく外見や行動の固定観念にとらわれず、自分らしさを表現する人々を指す言葉です。ジェンダーレス男子は、従来の「男性らしさ」にとらわれない男性を指します。具体的には、メイクをしたり、スカートを着用したり、中性的なファッションを楽しんだりする男性が該当します。
彼らは「男性は力強くあるべき」「男性は化粧をしない」といった固定観念から解放され、自分が美しいと感じるスタイルを追求します。日本では、タレントのりゅうちぇるさんや、とまんさんなどが代表的な存在として知られています。
ジェンダーレス女子は、従来の「女性らしさ」の枠組みを超えた女性を指します。ショートヘアやボーイッシュなファッション、メイクをしないナチュラルなスタイルなど、自分が心地よいと感じる表現を選択する女性が該当します。「女性は長い髪でスカートを履くもの」という固定観念にとらわれず、パンツスタイルやユニセックスな服装を好む女性も増えています。
重要なのは、ジェンダーレス男子・女子は単なるファッションの一形態ではなく、自己表現の自由を体現する存在だということです。彼らは性別による制約から解放され、「自分らしさ」を最優先に考えて生きています。
このような人々の存在は、社会全体に「性別による固定観念は必要ない」というメッセージを発信し、多様性を認め合う文化の醸成に貢献しています。ジェンダーレス男子・女子という言葉自体も、将来的には性別を前提としない表現に変わっていく可能性があります。
ジェンダーレスに関する世界・日本の現状
ジェンダーレスな価値観は、世界各国で異なるスピードと形で社会に浸透していますが、その現状や取り組みには国や地域によって大きな違いがあります。世界各国で進められている先進的な政策や企業・ファッション業界の取り組み、そして日本における教育現場や政府の対応、若い世代を中心とした価値観の変化について詳しく見ていきます。
世界の現状
世界各国では、ジェンダーレスな価値観が急速に広がりを見せています。特に北欧諸国やカナダ、オーストラリアなどでは、政府主導で性別に中立的な政策が次々と導入されています。
スウェーデンでは、性別に中立的な人称代名詞「hen」が辞書に登録され、公式文書でも使用されるようになりました。(※1)これは、従来の「han(彼)」や「hon(彼女)」に代わる新しい代名詞として、性別を特定しない表現を可能にしています。また、同国では保育園や学校教育においても、性別による役割分担を前提としない教育を心がけています。
カナダでは、性自認や性表現に基づく差別を禁止する法律が制定され、パスポートの性別欄に「X」という第三の選択肢が追加されました。(※2)これにより、男性・女性のどちらにも当てはまらないと感じる人々が、公的書類においても自分らしさを表現できるようになりました。
ファッション業界においても、グッチ、バーバリー、ルイ・ヴィトンなどの高級ブランドが、男女の境界を超えたジェンダーレスコレクションを発表し、大きな話題を呼んでいます。これらのブランドは、性別による服装の区別をなくすことで、個人の自由な表現を支援し、新しい市場を開拓しています。
※2Canadians can now identify as gender “X” on their passports – Canada.ca
日本の現状
日本におけるジェンダーレスの広がりは、世界の動きと比較するとゆるやかですが、着実に社会に浸透しつつあります。特に若い世代を中心に、性別による固定観念から解放された価値観が受け入れられています。
ファッション業界では、大手アパレルブランドが、男女兼用のユニセックスラインを展開し、性別を問わない商品開発を進めています。また、日本発のブランドでは、早くから性別の境界を超えたデザインを提案し、世界的にも高い評価を得ています。
教育現場では、制服の選択制を導入する学校が近年増加しており、東京都内の学校では、生徒が自分の性自認に合わせてスカートかズボンかを選択できる制度を採用する学校が登場しました。全国的な注目を集めました。このような取り組みを行うことによって、生徒自身が納得のいく形で制服を着ることができます。
日本政府も、閣議決定された第5次男女共同参画基本計画において、性的指向・性自認に関する理解促進を明記し、多様性を尊重する社会づくりを推進しています。(※3)また、厚生労働省は職場におけるハラスメント防止指針を改定し、性的指向や性自認に関する侮辱的な言動もパワーハラスメントに該当することを明確化しました。(※4)
しかし、日本では依然として性別による役割分担意識が根強く残っており、世界経済フォーラムが発表する「ジェンダーギャップ指数」では、2024年に146カ国中118位という低い順位にとどまっています。(※5)これは、政治参加や経済分野における男女格差が大きいことが主な要因となっています。
それでも、Z世代を中心とした若い世代では、ジェンダーレスな価値観が急速に広がっており、SNSを通じて自分らしさを表現する人々が増えています。今後は、こうした若い世代の価値観が社会全体に浸透していくことが期待されています。
※3第5次男女共同参画基本計画~すべての女性が輝く令和の社会へ~(令和2年12月25日閣議決定) | 内閣府男女共同参画局
※4職場におけるハラスメントの防止のために(セクシュアルハラスメント/妊娠・出産等、育児・介護休業等に関するハラスメント/パワーハラスメント|厚生労働省
「ジェンダーレス」が注目されている背景
ジェンダーレスという概念が現代社会で急速に注目を集めるようになった背景には、若い世代の価値観の変化やSNSの普及、そして多様性を尊重する社会の流れがあります。
この章では、ジェンダーレスファッションとライフスタイルがどのように広がりを見せているのか、ジェンダーレス文化が職場環境やメディア表現、家族のあり方にどのような影響を与えているのか、そして多くの人々がなぜジェンダーレスの考え方に共感を寄せるようになったのかについて詳しく見ていきます。
ジェンダーレスファッションとライフスタイルの台頭
近年、ジェンダーレスファッションが急速に広がりを見せている背景には、Z世代を中心とした若い世代の価値観の変化があります。SNSの普及により、世界中の多様な価値観やライフスタイルに触れる機会が増え、従来の「男性向け」「女性向け」という二分法的な考え方に疑問を持つ人々が増加しました。
ファッション業界では、この流れを受けて多くのブランドがジェンダーレスラインを展開しています。例えば、WEGOなどのファストファッションブランドは、性別を問わないデザインの商品を増やし、売り場でも男女の区別をなくす試みを行っています。(※6)これらの商品は、オーバーサイズのシルエットやシンプルなデザインが特徴で、誰もが自分らしく着こなせることを重視しています。
ライフスタイルの面でも、ジェンダーレスな価値観が浸透しています。料理や家事を楽しむ男性、DIYやアウトドアを趣味とする女性など、性別による活動の制限から解放された生き方を選ぶ人々が増えています。また、美容やスキンケアに関心を持つ男性も増加し、男性向けコスメ市場は年々拡大しています。
この傾向は、個人の自己表現の自由度が高まったことを示しています。人々は、社会から押し付けられた性別役割ではなく、自分が心地よいと感じる方法で生活することを選択できるようになりました。
※6WEGO 「ジェンダーレスファッション」のコーディネート | WEGO ONLINE STORE
ジェンダーレス文化が社会に与える影響
ジェンダーレス文化の広がりは、社会のさまざまな分野に大きな影響を与えています。最も顕著な変化のひとつは、職場環境における多様性の促進です。性別による職業選択の偏見が薄れ、男性保育士や女性エンジニアなど、従来は性別による偏りが大きかった職業においても、個人の適性や興味に基づいた選択が尊重されるようになりました。
メディアや広告業界では、ジェンダーレスな表現が主流になりつつあります。従来の「男性向け」「女性向け」という、対象となる人の性別によって分けられていた広告から、個人の価値観や生き方に焦点を当てた多様な表現へと変化しています。これにより、より多くの人々が自分らしさを肯定的に捉えられるようになり、社会全体の価値観の多様化が促進されています。言語表現においても変化が見られ、性別を特定しない言葉遣いや包括的な表現が増えており、無意識の偏見を減らし、誰もが平等に扱われる社会の実現に貢献しています。
また、ジェンダーレス文化は家族のあり方にも変化を加えており、育児や家事の分担において、以前は「家事、育児は女性がするのが普通」という考えを多くの人が持っていましたが、現在は育児休業制度が採用されており、男性でも育児に力を入れることができる環境になりつつあります。(※7)これにより、家族全体の生活の質が向上し、より健全な家族関係の構築が可能になっています。
※7育児休業制度とは | 育てる男が、家族を変える。社会が動く。イクメンプロジェクト
ジェンダーレス化を促進するための日本政府・自治体の取り組み具体例
日本では、国際的な流れを受けて、政府や自治体がジェンダー平等やジェンダーレス社会の実現に向けたさまざまな施策を展開していますが、その具体的な内容や成果については広く知られていない面が多くあります。日本が国際社会と連携しながら進めてきたジェンダー平等推進の歴史的経緯、開発協力における女性支援の取り組み、そして近年の政府による具体的な支援実績や自治体レベルでの先進的な取り組み事例について詳しく見ていきましょう。
日本は1975年の第1回世界女性会議以降、女性のエンパワーメントとジェンダー平等の実現に向けた国際的な取り組みを継続的に支援してきました。また、1985年には女子差別撤廃条約を締結し、1999年には男女共同参画社会基本法を施行するなど、国内外でジェンダー平等を推進する制度を整備しました。開発協力においては、1995年に「途上国の女性支援(WID)イニシアティブ」を策定し、女性の教育、健康、経済社会活動への参加を重点的に支援し、さらに2005年には「ジェンダーと開発(GAD)イニシアティブ」へと発展させ、ODAのあらゆる段階にジェンダーの視点を組み込むことに成功しています。
2015年の「開発協力大綱」では、女性特有のニーズに配慮しながら、開発協力のあらゆる段階における女性の参画促進を明記し、同年策定の「女性の活躍推進のための開発戦略」では、女性にやさしいインフラ整備、STEM分野を含む女子教育支援、防災分野での女性のリーダーシップ推進を重点分野として位置づけています。
具体的な支援実績として、2013年から2015年の3年間で30億ドル超の女性関連支援を実施したことがあり、これは女性の能力強化、保健医療分野の取組強化、平和と安全保障分野における女性の参画と保護という3つの重点分野で展開されました。2016年のG7伊勢志摩サミットでは、2018年までの3年間で約5,000人の女性行政官等の人材育成と、アフリカや南アジアを中心に約5万人の女子の学習環境改善を表明し、同年の第3回国際女性会議WAW!では、女性の権利の尊重、能力発揮、リーダーシップ向上を重点に、3年間で総額約30億ドル以上の支援を行うことを発表しました。
外務省では、ODAジェンダー担当官を在外公館に配置し、ジェンダー配慮の好事例や教訓を共有することで、組織全体でのジェンダー主流化を推進しています。このような継続的な取り組みを通じて、日本はこれからも国際社会におけるジェンダー平等の実現に向けて、日々前進していくことでしょう。※8
日本企業のジェンダーレスに対する取り組み事例
近年、日本企業におけるジェンダーレスの取り組みが注目を集めています。性別に関わらず、全ての従業員が能力を発揮し、活躍できる職場環境の整備に力を入れる企業が増えてきました。この章では、花王、伊藤忠商事、資生堂、トレンダース、マネーフォワードの5社を取り上げ、それぞれの企業がどのようなジェンダーレスの取り組みを行っているのかを紹介します。
①花王株式会社による取り組み
花王株式会社は、2023年に「DE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)」の取り組みを実施する一環として、取得を必須とした有給育児休暇制度を新設するとともに、育児期の短時間勤務制度を採用しています。花王は社員の性別に関係なく、全員が安心して仕事と育児を両立できる環境整備を心がけており、社員が自身の理想のキャリアの実現に向けて、より意欲高く働けるように多様な働き方を選択できる環境づくりを進めています。(※9)
※9 花王 | 花王、育児両立支援制度の新設・拡充で女性活躍推進を加速
②伊藤忠商事による取り組み
伊藤忠商事は多様化する消費者のニーズに対応するため、新たな価値提供が必要と判断しました。そのためには「多様性を受容し、活かすこと」が必要不可欠と考え、人種、性、宗教、国籍、年齢等、あらゆる差別を禁止し、人権を尊重するための取り組みを開始しました。
職場において従業員がパワーハラスメント、セクシャルハラスメントなどのハラスメントを受けることがないようにする、また、多様な価値観を受け入れ、柔軟な働き方の実現や支援等を実施しています。従業員の主体的なキャリア形成を支援し、多様な価値観が尊重され、従業員全員が最大限に力を発揮できる企業風土づくりを推進しています。また、「人材多様化推進計画」により、女性従業員を含む多様な人材の確保、拡大、活躍の支援に向けた制度を採用しました。
2010年以降は、全従業員がモチベーション高く働くことで、生産性を高めるという「働き方改革」のもとに、朝型勤務や健康経営、プライベートや育児と仕事の両立支援策等の取組みを行ってきました。その結果、多くの従業員にとって能力を発揮することができる職場づくりの実現に繋がっています。(※10)
③資生堂による取り組み
トラベルリテール地域本社では、「Friends-International」(※11)とパートナーシップを結び“Empower Her”プロジェクトの支援が2020年に始まりました。このプロジェクトでは、性別関係なく、教育とエンパワーメントを通じて、従業員全員が本来持っている能力を引き出し、主体的に行動できるようにすることや貧困状態を改善することを目的に、カンボジアの経済的に厳しい生活を送る人々を対象とした美容訓練プログラムを提供し、美容業界への就職を支援しています。
資生堂は、寄付金や製品の提供など、美容訓練のカリキュラムに関わるなど積極的に支援を行っています。2023年は、108人の方が指導を受け、57名が就労の機会を得ることができました。また、「Un Village Sous Les Etoiles」(※12) とも関係を築き、活動の幅を広げています。UVSLEを通じて、4〜18歳までのネパールの低い立場にある少女たちに、安全な環境の中にある住居や医療、教育、職業訓練を提供しています。
「Opportunity Village」(※13)の建設や、マイクロビジネスの立ち上げなどのキャリア支援をしています。2023年までに、109名の方がトレーニングを受け、10名がマイクロビジネスを立ち上げ、「Opportunity Village」の住居に33名が住む機会を得ました。(※14)
※11 Friends-International | Together, building futures
※12 Un Village Sous Les Etoiles
※13 Start Here – Opportunity Village – Disability Services & Support Organization
※14 グローバルにおける女子教育と経済的自立支援 | 社会 | サステナビリティ | 資生堂 企業情報
④トレンダースによる取り組み
トレンダースは、性別に関わらず全ての社員が働きやすい環境づくりが進んでいます。出産に関する支援では、出産した社員へのお祝い金支給に加え、産休前から復帰後まで継続的な面談によるサポート体制を整備しています。特筆すべきは、性別を問わず育休からの復帰を奨励するお祝い金制度を設けており、男性の育児参加も積極的に支援している点です。
働き方の柔軟性においても、育児や介護との両立を目的とした在宅勤務や時短勤務が可能となっており、実際に海外在住でリモートワークをしている社員も存在します。また、月に1回開催される「トレママ・パパランチ交流会」では、性別に関係なく育児に携わる社員同士が情報交換を行い、産休・育休中の社員も参加することで、職場とのつながりを維持しています。
ワークライフバランスの充実も図られており、在籍年数に応じたリフレッシュ休暇の付与、社員本人だけでなく配偶者や子供の誕生日にも特別休暇とお祝い金を支給する制度など、家族全体を支援する姿勢が見られます。結婚祝い金や会社近隣居住者への家賃補助制度も整備され、社員のライフステージに応じた支援が行われています。(※15)
⑤マネーフォワードによる取り組み
マネーフォワードは、多様性を尊重し、一人ひとりが輝ける職場環境を目指しています。その一環として、共通の価値観・目指したい世界観をMission Vision Values Culture(MVVC)として掲げ、メンバー全員がそれを大切にしています。組織の拡大やグローバル化に伴い、エンジニア組織のメンバーも多様化していますが、MVVCの理解を深め、浸透させるための様々な工夫を重ねています。
取り組みの一つとして、フレックスタイム制や裁量労働制、短時間勤務の導入により、個人のライフスタイルに合わせた柔軟な働き方を可能にしています。また、性別、国籍、宗教、年齢、学歴などに関わらず、多様な人材の採用を積極的に行っています。さらに、看護休暇や介護休暇の適用対象者を拡大することで、家族のケアを必要とするメンバーがより働きやすい環境を整えています。(※16)
※16Talent Forward|株式会社マネーフォワード
ジェンダーレスに関するよくある質問
以下に、ジェンダーレスに関する質問を5つピックアップしました。読者の方の疑問が少しでも解決しましたら幸いです。
Q1. ジェンダーレスとは何ですか?
A1. ジェンダーレスとは、性別に関係なく個人の能力や個性を尊重する考え方です。性別による差別や固定観念にとらわれず、一人ひとりの多様性を認め合うことを目指しています。
Q2. 企業がジェンダーレスに取り組む理由は?
A2. 企業がジェンダーレスに取り組むことで、優秀な人材の確保や従業員のモチベーション向上、イノベーションの促進などが期待できます。また、社会的責任の観点からも重要視されています。
Q3. ジェンダーレスな職場環境づくりに必要なことは?
A3. 性別に関わらず公平な評価制度や育児・介護休暇制度の整備、多様な働き方の導入などが必要です。また、従業員の意識改革やトップのコミットメントも重要です。
Q4. ジェンダーレスの取り組みによる効果は?
A4. ジェンダーレスの取り組みにより、従業員の働きがいや仕事への満足度が向上し、離職率の低下や生産性の向上が期待できます。また、企業イメージの向上にもつながります。
Q5. 今後のジェンダーレスの展望は?
A5. 今後は、更なる制度の充実や意識改革が進み、性別に関わらず個人の能力を発揮できる社会の実現が期待されます。企業の積極的な取り組みが、社会全体のジェンダーレスの推進につながることが望まれます。
まとめ
本記事では、ジェンダーレスの概念やLGBTやジェンダーフリーとの違いについて解説しました。世界では性別に囚われない生き方が広がる一方、日本ではまだ理解が十分でない現状があります。ジェンダーレスが注目される背景には、ファッションやライフスタイルの変化、社会への影響があり、政府や企業も取り組みを始めています。
花王、伊藤忠商事、資生堂、トレンダース、マネーフォワードの事例から、ジェンダーレスへの理解と支援の重要性が明らかになりました。多様性を認め合う社会の実現には、一人ひとりの意識改革と制度、環境の整備が不可欠です。性別に縛られない生き方を尊重し、ジェンダーレスについての理解を深めていくことが、これからの時代に求められているのです。