発展途上国とは?地域別の発展途上国ランキングや日本の支援状況を紹介!

発展途上国とは何?言葉は聞いたことがあるけれど詳しくは知らない、発展途上国と先進国とは何が違うのか分からない、と疑問に思う方も多いのではないでしょうか。 発展途上国は経済発展の水準が低い国を指し、貧困や教育、医療など様々な課題を抱えています。 一人当たりのGDPが低く、産業構造も第一次産業中心で、社会インフラの未整備が特徴です。 しかし、発展途上国の中にはめざましい経済成長を遂げている国も存在します。

この記事では、発展途上国の定義や特徴、地域別のランキング、そして日本の支援状況について詳しく解説します。 発展途上国の現状を知り、私たちに何ができるのかを一緒に考えてみましょう。 

発展途上国とは?特徴と重要キーワードとの違い

「発展途上国」という言葉はよく耳にするが、ぼんやりとしたイメージしかなく、あまり詳しくは知らないという人は多いのではないでしょうか。この章では「発展途上国」の特徴を3つの分野に分けて紹介、また、「発展途上国」の話題を取り上げる際によく比較される「開発途上国」「先進国」との違いについて紹介します。

発展途上国の特徴①経済的特徴

発展途上国の経済的特徴として、まず一人当たりの GDP(国内総生産)が低いことが挙げられます。先進国と比較すると、その差は歴然です。

また、産業構造に着目すると、第一次産業に分類される農業、漁業、林業などの比重が高く、工業化や産業の高度化が進んでいないのが特徴です。こうした経済構造の結果、発展途上国は貿易収支が赤字になりがちです。発展途上国は輸出品の多くが一次産品であるため、国際市場における価格変動の影響を受けやすく、安定した外貨獲得が困難となっています。加えて、国内の貯蓄率が低く、投資に回せる資金が限られているため、経済成長のスピードが遅くなりがちです。

さらに、発展途上国では、所得格差が大きいことも特筆すべき点です。一部の富裕層が経済を牽引する一方で、大多数の国民は貧困に苦しんでいます。この格差は、教育や医療へのアクセスの不平等にもつながっており、貧困の連鎖を生み出す要因となっています。

発展途上国の特徴②社会的特徴

発展途上国の社会的特徴として、まず貧困率の高さが挙げられます。安定した職に就くことができず十分な収入を得られない人々が多く、基本的な生活を送ることすら困難な状況にあります。こうした貧困は、教育水準の低さとも密接に関係しています。学校に通えない子どもたちが多く、識字率が低いのが現状です。

また、医療体制が整っておらず、患者に対して十分な対応ができないことも発展途上国の大きな問題です。医療施設や医療従事者が不足しているため、適切な治療を受けられない人々が多くいます。

その結果、平均寿命が先進国と比べて短くなっています。さらに、発展途上国では人口増加率が高く、都市部への人口集中が進んでいます。しかし、都市のインフラ整備が追いついておらず、貧困層が密集して住むスラムの拡大やそこでの劣悪な生活環境が社会問題となっています。加えて、ジェンダー不平等も発展途上国に根強く残っている問題であり、女性の教育機会や就業機会が限られ、意思決定の場に参加できないことが多くあります。この不平等は、社会全体の発展を妨げる要因にもなっています。

発展途上国の特徴③インフラと制度の特徴

発展途上国のインフラと制度の特徴として、まず電力、水道、交通、通信などのインフラが未整備であることが挙げられます。安定した電力供給や清浄な水へのアクセスが限られ、道路や鉄道などの交通網も十分に発達していません。国のインフラの発達レベルは、その国の経済発展と国民生活の質に直結します。そのため、こうしたインフラの不足は経済活動を阻害し、国民生活の質を低下させる要因となっています。

また、発展途上国では行政の効率性や透明性が低く、行政機関における汚職が多発しているという問題があります。政府の機能不全により、公共サービスの提供が滞り、国民の信頼を失っています。さらに、法制度や金融システムが未発達であるため、ビジネス環境が整っておらず、外国からの投資を呼び込みにくい状況にあります。加えて、発展途上国は政治が不安定で、紛争のリスクが高いことも特徴です。民族対立や宗教対立、権力闘争などが原因で、内戦が起こることもあります。こうした不安定な情勢は、国の発展を大きく妨げる要因となっています。インフラ不足が顕著に表れているアフリカ地域の多くの国では、電力アクセス率が低く安定した電力供給がないため、企業活動が制限され、経済成長が阻まれています。

さらには、上下水道の整備が不十分なため、水が原因となる病気が広がり、国民の健康に影響を及ぼしています。制度面での課題としては、土地の所有権が明確でないことがあります。登記制度が整っておらず、土地の権利関係が曖昧なため、紛争の原因となっています。また、契約を担保する司法制度が脆弱であるため、ビジネス取引のリスクが高くなっています。

こうしたインフラと制度の問題は、発展途上国が抱える課題の一部です。これらの問題を解決するためには、国際社会の支援と、発展途上国自身の努力が求められます。インフラ整備や制度改革に向けた投資を進めるとともに、技術の発展や移転を通じて、国全体を発展させていく必要があります。

発展途上国と開発途上国の違い

発展途上国と開発途上国は、ほぼ同義で使われることが多いですが、厳密には違いがあります。開発途上国は、先進国に比べて経済発展の水準が低い国を指す総称です。一方、発展途上国は、開発途上国の中でも特に発展の水準が低い国を指します。

国連では、後発開発途上国(LDC: Least Developed Countries)という分類を設けています。これは、開発途上国の中でも特に発展の遅れている国々を指します。LDCに分類されるためには、以下の3つの基準を満たす必要があります。

  1. 1人当たりの国民総所得(GNI)が低いこと
  2. 人的資産指数(HAI)が低いこと(栄養不足、児童死亡率、中等教育就学率、成人識字率などの指標で評価)
  3. 経済的脆弱性指数(EVI)が高いこと(自然災害や貿易の不安定性などの影響を受けやすいかを評価)

2021年時点で、国連が指定するLDCは46カ国あります。その多くはアフリカ大陸に位置する国で、経済的に極めて厳しい状況に置かれています。一方、発展途上国は、LDCよりは経済水準が高いものの、先進国との格差が大きい国々を指します。東南アジアや中南米、中東などに多く分布しています。これらの国々は、工業化の途上にあり、経済成長を続けていますが、国内の所得格差や社会問題を抱えているケースが多いです。

つまり、開発途上国は発展途上国を含む広い概念であり、発展途上国はその中でも特に発展の水準が低い国々を指すと言えます。ただし、国際機関によっては、この2つの用語を同義で用いることもあるため、文脈に応じて使い分ける必要があります。

発展途上国と先進国の違い

発展途上国と先進国の違いは、経済発展の水準に大きく表れています。先進国は高度な工業化を達成し、第三次産業であるサービス産業が経済の中心となっています。一方、発展途上国は工業分野がまだ途上にあり、第一次産業の比重が高くなっています。一人当たりのGDPも、先進国と発展途上国で大きな差があります。International Monetary Fundによると、2021年の一人当たりGDPは、先進国の代表である米国が68,309ドル、日本が39,285ドルであるのに対し、発展途上国の代表であるバングラデシュが2,503ドル、エチオピアが936ドルとなっています。(※1) この格差は、国民の生活水準に直結しています。先進国では、教育や医療、社会保障などの公共サービスが充実しており、多くの国民が質の高い教育を受ける機会を得て、健康な生活を送ることができます。

一方で、発展途上国ではこうした基本的なサービスを受けることが当たり前ではないため、先進国では一般的とされている生活ですら、送ることが難しい状況にあります。さらに、先進国は、安定した政治体制と法の支配が確立されています。民主主義が定着し、国民一人一人の人権が尊重される社会が形成されています。

しかし発展途上国では、政治体制が不安定であること、行政機関での汚職などの問題を抱えているケースが少なくありません。ただし、発展途上国の中には、近年著しい経済成長を遂げている国もあります。中国やインドなどの新興国は、工業化を進め、国際市場での存在感を高めています。これらの国々は、先進国と発展途上国の中間に位置する存在として、「新興国」と呼ばれることもあります。技術革新の面でも、先進国と発展途上国の差は歴然で、先進国ではAI、IoT、ビッグデータなどの最先端技術が産業や社会に浸透し、生産性の向上や新たな価値を見出していますが、発展途上国では、こうした技術の導入が遅れており、デジタル・ディバイドの問題が指摘されています。

また、環境問題への対応も、両者で大きく異なります。先進国は、脱炭素社会の実現に向けて、再生可能エネルギーの導入や省エネ技術の開発に積極的に取り組んでいますが、発展途上国では、経済成長を優先するあまり、環境問題の対策の優先順位が低くなってしまっています。つまり、発展途上国と先進国の間には、経済発展や国民の生活水準、政治体制、技術革新、環境問題への対応など、様々な側面で大きな格差が存在しており、対の関係にある国々の総称と言えます。

※1 IMF DataMapper

発展途上国ランキング一覧【地域別】

今回紹介する「発展途上国ランキング」では、発展途上の度合、貧困の度合を強調するために、「一人当たりの名目GDP(USドル)」が低い方が上位になるように記載しています。

東アジア・太平洋

※2

順位国名一人当たりのGDP(USD)
1ミャンマー約1124USD
2朝鮮民主主義人民共和国約1316USD※3
3東ティモール約1502USD
4ラオス約1975USD
5ソロモン諸島約2160USD
6キリバス約2303USD
7パプアニューギニア約2502USD
8カンボジア約2545USD
9バヌアツ約3468USD
10フィリピン約3905USD
11ベトナム約4316USD
12アメリカ領サモア約4497USD
12サモア約4497USD
14ミクロネシア連邦約4689USD
15インドネシア約4919USD
16トンガ約5138USD
17モンゴル約5796USD
18フィジー約5933USD
19ツバル約6191USD
20マーシャル諸島約6417USD
21タイ約7350USD
22ナウル約11865USD
23マレーシア約12090USD
24中華人民共和国約12960USD

※2 IMF DataMapper

※3 北朝鮮の一人当たりGDPは世界177位――伏せてきた“国の数字”を金正恩氏が明かしたわけ(西岡省二) – エキスパート – Yahoo!ニュース 

朝鮮民主主義人民共和国のGDPについて

朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)のGDPのデータは、国際機関や一般的に公開されているデータに比べて、正確なデータがあまりありません。これは、他の国とは違い、北朝鮮は国内の経済情報が非公開で、情報を入手するのが困難です。そのため、国際的な機関が推測した数値に基づいて、経済状況を推測することが一般的とされています。

GDPが低い国の特徴(東アジア・太平洋編)

共通している特徴は、道路、港湾、電力供給などのインフラが十分に整備されていない点、第一次産業への依存度が高く、工業化が進んでいない点があげられます。それぞれの国特有の特徴は、ミャンマーや東ティモールでは、長年にわたって政情不安や紛争により経済発展が阻害されており、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)は国際社会から孤立しており、経済制裁の影響を受けています。自然災害のリスクが大きいソロモン諸島やキリバスなどの島嶼国は、サイクロンや海面上昇などの自然災害の被害が大きく、経済発展の障壁となっています。

南アジア

※4

順位国名一人当たりのGDP(USD)
1アフガニスタン約409USD
2ネパール約1323USD
3パキスタン約1459USD
4インド約2546USD
5バングラデシュ約2651USD
6スリランカ約3698USD
7ブータン約3723USD
8モルディブ約16561USD

※4 IMF DataMapper

GDPが低い国の特徴(南アジア編)

アフガニスタンやパキスタンでは、紛争が頻繁に起こる国であるため、経済発展が阻害されています。ネパールやアフガニスタンは地理的な原因もあり、山岳地帯が多く、インフラ整備が困難な地形を抱えています。このため、物流コストが高く、市場へのアクセスが制限されてしまいます。アフガニスタンが他の国よりも突出してGDPが低いのは、国内で起こる紛争と地理的な条件の厳しさが原因となっているためです。また、南アジアの国々では、農業が主要な産業ですが、灌漑設備の不足や気候変動の影響を受けやすく、生産性が低迷しがちです。農産物の付加価値が低いことも、経済成長の妨げとなっています。さらに、貧困や男女格差により教育や医療サービスの利用が限られている人々が多数存在しています。このような点で、南アジアの国々は経済発展が遅れています。

中央アジア・ヨーロッパ

※5

順位国名一人当たりのGDP(USD)
1タジキスタン約1183USD
2キルギス約2191USD
3ウズベキスタン約2848USD
4ウクライナ約5253USD
5コソボ約6529USD
6モルドバ約6721USD
7アゼルバイジャン約7151USD
8ベラルーシ約7821USD
9ボスニア・ヘルツェゴビナ約7965USD
10アルメニア約8125USD
11ジョージア約8237USD
12アルバニア約8504USD
13北マケドニア約8628USD
14モンテネグロ約11894USD
15トルクメニスタン約11951USD
16セルビア約12281USD
17カザフスタン約13157USD
18トルコ約13244USD
19ロシア約14079USD
20ブルガリア約15892USD
21ルーマニア約18412USD
22クロアチア約21869USD

※5 IMF DataMapper

GDPが低い国の特徴(中央アジア・ヨーロッパ編)

中央アジア・ヨーロッパ地域は、旧ソビエト連邦の影響を大きく受けた地域であり、体制転換が行われた後の経済発展に差が見られます。その中でも国によって異なった問題を抱えています。タジキスタンとキルギスは山岳地帯が多く、天然資源に乏しい国です。また、内陸国であるという理由から、海上輸送によるアクセスが限られ、物流コストが高くなる傾向にあります。ウズベキスタンを含むこれらの国々では、農業などの第一次産業が主要な産業となっていますが、灌漑設備の老朽化や、特定の作物への依存など、生産性の向上が課題となっています。また、教育システムの改革が進められていますが、まだ十分とは言えず、人材の不足はイノベーションや生産性の向上を阻害する要因となっています。若い世代の育成システムを確立させ、安定した教育システムを提供できるように対策するべきです。

ラテンアメリカ・カリブ海地域

※6

順位国名一人当たりのGDP(USD)
1ハイチ約1603USD
2ニカラグア約2602USD
3ホンジュラス約3267USD
4ボリビア約3748USD
5ベネズエラ約3828USD
6エルサルバドル約5344USD
7スリナム約5405USD
8グアテマラ約5933USD
9パラグアイ約6339USD
10エクアドル約6792USD
11コロンビア約7015USD
12ジャマイカ約7032USD
13キューバ約7449USD
14ベリーズ約7587USD
15ペルー約7929USD
16セントビンセント約9653USD
17ブラジル約10350USD
18ドミニカ共和国約11279USD
18ドミニカ国約11279USD
20グレナダ約11516USD
21セントルシア約13554USD
22メキシコ約13678USD
23コスタリカ約16390USD
24ガイアナ約21307USD

※6 IMF DataMapper

GDPが低い国の特徴(ラテンアメリカ・カリブ海地域)

ハイチやニカラグア、ベネズエラでは、政治的な対立が長年続いており、経済活動に悪影響を及ぼしています。治安の悪化や不安定な制度は、ビジネス環境を悪化させる要因となっています。ハイチやホンジュラスは、ハリケーンや地震など、自然災害の影響を受けるリスクが高い地域に位置しています。災害による被害は、インフラや生産設備に直接的な損失をもたらすだけでなく、復興までに膨大な時間と費用がかかります。

また、ボリビアやニカラグアは、対外債務という外国の政府や金融機関などに対して負担する債務が高く、債務返済が経済成長の足かせとなっています。また、輸出品目が特定のもので固定されており、一次産品への依存度が高いことから、貿易赤字に悩まされています。

中東・北アフリカ

※7

順位国名一人当たりのGDP(USD)
1イエメン約492USD
2シリア約2806USD※8
3パレスチナ約3258USD
4エジプト約3743USD
5ジブチ約3804USD
6モロッコ約3901USD
7チュニジア約3967USD
8イラン約4347USD
9レバノン約4409USD
10ヨルダン約4512USD
11アルジェリア約5389USD
12イラク約6250USD
13リビア約6422USD

※7 IMF DataMapper

※8 2010年のGDP

GDPが低い国の特徴(中東・北アフリカ地域編)

中東・北アフリカ地域は、豊富な石油資源を背景に経済発展を遂げた国々がある一方で、GDPが低い国々が存在します。イエメンやシリア、パレスチナでは、長年にわたる紛争によって経済活動を阻害しています。戦闘による直接的な被害だけでなく、投資の減少やインフラの破壊など、紛争による間接的な影響も深刻です。中東・北アフリカ地域は、世界で最も水資源が乏しい地域の一つであるため、イエメンやシリアでは、水不足が農業生産や生活環境に大きな影響を与えています。さらに、これらの国々では産業構造が未発達で製造業やサービス業の発展が不十分なことも、経済成長を妨げる原因となっています。また、若年層を中心に失業率が高く、貧困問題が深刻化しています。特にパレスチナやエジプトでは、人口増加に対して雇用機会が少なく、社会的に人手不足となっています。

サブサハラアフリカ

※8

順位国名一人当たりのGDP(USD)
1ブルンジ約327USD
2南スーダン約478USD
3中央アフリカ共和国約505USD
4マダガスカル約533USD
5エリトリア約566USD
6マラウイ約591USD
7モザンビーク約618USD
8ニジェール約621USD
9ソマリア約683USD
10シエラレオネ約727USD
11スーダン約772USD
12リベリア約808USD
13ガンビア約886USD
14マリ約909USD
15ブルキナファソ約910USD
16トーゴ約1001USD
17チャド約1023USD
18レソト約1035.2USD
19ギニアビサウ約1035.3USD
20ルワンダ約1061USD
21ウガンダ約1148USD
22タンザニア約1249USD
23ザンビア約1340USD
24ベナン約1435USD
25エチオピア約1511USD
26ギニア約1512USD
27コモロ約1534USD
28ナイジェリア約1637USD
29セネガル約1686USD
30カメルーン約1722USD
31ケニア約2110USD
32ジンバブエ約2114USD
33コンゴ民主共和国約2308USD
33コンゴ共和国約2308USD
35ガーナ約2383USD
36モーリタニア約2403USD
37コートジボワール約2560USD
38サントメ・プリンシペ約2949USD
39アンゴラ約2992USD
40エスワティニ約4175USD
41ナミビア約4235USD
42カーボベルデ約5083USD
43南アフリカ共和国約6111USD
44ボツワナ約7255USD
45赤道ギニア約7990USD
46ガボン約9079USD
47モーリシャス約11188USD

※8 IMF DataMapper

GDPが低い国の特徴(サブサハラアフリカ編)

サブサハラアフリカは、世界で最もGDPが低い地域の一つであり、多くの国々が経済的な困難に直面しています。

多くの国々が、長年にわたる植民地支配を経験しており、この歴史的背景が経済発展の妨げとなり、不安定な政治をもたらしています。サブサハラアフリカ諸国の多くは、石油や鉱物資源などの天然資源に依存した経済構造を持っています。そのため、資源価格の変動が経済成長に直結します。また、資源収入が一部の権力者に集中することが原因で、格差や腐敗の問題が深刻化しています。サブサハラアフリカの国々は、他の地域よりも特に交通網の整備が不十分であり、物資の運搬でさえ時間がかかってしまうことがあるので、経済活動の効率性を下げる要因となっています。また、物流コストの高さは、国内市場の発展や国際貿易の拡大を阻害しているため、経済発展が進まないという課題があります。

参考文献

IMF DataMapper

※「朝鮮民主主義人民共和国」と「シリア」以外の国に関しては、2023年のGDPを使用

インドや中国はなぜ発展途上国とされているのか?

インドと中国は、世界有数の経済大国であり、近年めざましい経済成長を遂げています。しかし、国際社会では未だに発展途上国として分類されているのが現状です。 この章では、インドと中国が発展途上国とされる理由について、一人当たりのGDPや所得格差、産業構造、社会インフラ、環境問題などの観点から分析していきます。

一人当たりのGDPと所得格差

インドと中国が発展途上国とされる主な理由の一つは、一人当たりのGDPが先進国と比べて低いことです。2023年のデータでは、インドの一人当たりGDPは2546ドル、中国は12960ドルです。これは、先進国の日本の33845ドルや、アメリカの82253ドルと比べると格段に低い水準にあります。また、両国とも国内の所得格差が大きいことが特徴です。インドでは上位10%の富裕層が、国民所得の約57%を占めている一方で、下位50%の貧困層は約13%しか得ていません。中国でも、都市部と農村部の所得格差が拡大しており、社会的な問題となっています。

このように、高い経済成長率を誇る両国ですが、その恩恵が国民に広く行き渡っているとは言えない状況にあります。インドと中国は、富裕層に当たる国民の数は多いですが、富裕層に当たる国民の割合は低いというのが特徴としてあります。一部の富裕層が経済成長の果実を享受する一方で、多くの国民は貧困に苦しんでいるのが現状です。

さらに、インドに関しては、「絶対的貧困層の存在」が大きな課題となっています。世界銀行が定義する1日1.90ドル未満で生活する人口の割合は、インドで23.88%(2015年)に上ります。これは、国内の経済成長が、貧困層の割合に関与していないということを示しています。インドでは、カースト制度へとつながる可能性のある差別や、教育機会の不平等などが、貧困の連鎖を生み出す要因となっています。中国でも、都市戸籍(戸口)と農村戸籍の間の格差が、教育や医療、社会保障へのアクセスに影響を与えています。つまり、インドと中国の一人当たりGDPの低さと所得格差の大きさは、両国が発展途上国とされる主要な理由の一つです。経済成長の果実を国民全体で公平に分配し、貧困層の生活水準を引き上げていくことが、両国の重要な課題だと言えます。

産業構造の特徴と課題

インドと中国が発展途上国とされるもう一つの理由は、両国の産業構造の特徴と課題にあります。

インドでは、GDPに占める農業の割合が高く、全労働人口の約55%(※9)が農業に従事しています。しかし、農業の生産性は低く、設備の不足や小規模な土地所有など、多くの課題を抱えています。また、先進国と比べると製造業の発展が遅れており、GDPに占める第二次産業比率は約28.5%(※10)に留まっています。

中国では、製造業がGDPの約39.9%(※11)を占め、「世界の工場」と呼ばれるほど発展しました。しかし、その多くは労働集約型の産業であり、付加価値の低い製品の生産に偏っています。近年は、技術力の向上や産業の高度化を目指す「中国製造2025」などの政策を推進していますが、先進国との差は依然として大きいのが現状です。

また、両国とも第三次産業、特にサービス産業の発展が課題となっており、インドではIT産業が急成長していますが、その恩恵は一部の都市部の富裕層に限定されています。中国でも、サービス産業の生産性は製造業と比べて低く、更なる発展が求められています。さらに、インドと中国には、「インフォーマルセクター」の存在が大きな特徴です。インフォーマルセクターとは、政府に登録されておらず、社会保障の対象とならない経済活動のことを指します。インドでは、全労働人口の約90%(※12)がインフォーマルセクターで働いていると推定されています。中国でも、農村部を中心に多くの人々がインフォーマルセクターに従事しています。

このように、インドと中国の産業構造は、先進国と比べて第一次産業や労働集約型の製造業に偏っており、サービス産業の発展が遅れています。また、インフォーマルセクターの存在が、労働者の権利保護や社会保障の提供を困難にしています。

※9 インドの農業を変革する: 国際機関との共創活動 | NEC

※10,11 第2章 第1節 貿易構造と人口動態からみたインドの経済成長の特徴 : 世界経済の潮流 2023年 Ⅰ – 内閣府

※12 国際労働財団(JILAF) |

社会インフラの未整備と地域間格差

インドと中国は、社会インフラの未整備と地域間格差に関しても問題視されています。インドでは、電力、交通、上下水道などの基礎的なインフラが不足しています。電力不足は近年改善傾向にあり、2017年度の電力不足率は全国平均で2%程度となっているが、(※13)停電が頻繁に発生し、安定した電力供給ができていない点が長年の課題となっています。

また、交通網の整備が遅れており、舗装道路の割合は先進国と比較すると割合は低くなっています。中国では、近年の急速な経済成長に伴い、インフラ整備が進められてきました。高速鉄道網や高速道路網の建設など、交通網のインフラの充実が図られています。しかし、都市部と農村部の格差が大きく、農村部では依然として基礎的なインフラが不足している状況です。教育面に関しても、両国とも地域間の格差が課題となっています。インドでは、初等教育の就学率は向上しているものの、教育の質には地域差があります。また、高等教育への進学率は都市部と農村部で大きな差があります。農村部で暮らしている子どもは、金銭面での問題もありますが、学校までの距離が遠いという課題もあり、毎日通うというのが困難な家庭が多いです。

このような原因があり、都市部と農村部の教育格差が広がります。また、農村部では教育施設の不足や教員の質の低さなどが指摘されています。医療面では、インドと中国のいずれも、医療施設や医療従事者の不足が課題となっています。特に農村部では、医療サービスへのアクセスが限られており、健康格差が生じています。また、公的医療保険の整備が不十分であるため、医療費の自己負担が重荷となっているのが現状です。さらに、両国とも地域間の経済格差が大きいので、都市部と農村部の所得格差が拡大しており、貧困層の多くが農村部に集中しています。中国でも、沿岸部の都市と内陸部の農村の経済格差が問題となっています。

※13 6. 電気事業体制 - インドの電気事業|電気事業連合会

環境問題と持続可能な開発の課題

急速な経済成長と都市化に伴い、インドと中国では大気汚染や水質汚濁などの環境問題が深刻化しています。世界保健機関(WHO)によると、大気汚染による死亡者数は、インドで年間約180万人(※14)、中国で約100万人(※15)と推定されています。

また、両国とも水資源の不足や水質汚濁が深刻な問題で、安全な飲料水へのアクセスが限られている地域が多くあります。エネルギー面でも、インドと中国は化石燃料への依存度が高く、温室効果ガスの排出量が多いことが課題となっています。中国は世界最大のCO2排出国であり、インドも第3位の排出国です。両国とも再生可能エネルギーの導入を進めていますが、いまだに化石燃料への依存状態は続いており、エネルギー需要の急増に対応するには不十分な状況です。

さらに、両国では急速に都市化が進むことが原因とされている環境問題も深刻です。無秩序な都市開発により、緑地の減少や生態系の破壊が進んでいます。また、都市部では廃棄物処理が追いつかず、不適切な処理による土壌汚染や健康被害が生じています。このような環境問題は、持続可能な開発の観点からも大きな課題となり、環境の悪化は、貧困層の生活に直接的な影響を与え、健康被害や経済的損失をもたらします。また、自然資源の枯渇は、将来世代の発展の可能性を奪うことにもつながります。環境問題と持続可能な開発の課題は、インドと中国が発展途上国とされる理由の一つであり、両国の持続的な発展のために解決すべき重要な課題であると言えます。経済成長と環境保全を両立させ、次世代に持続可能な社会を引き継ぐことが、両国に求められています。

※14  Air Pollution – India

※15 Air pollution

発展途上国に対する日本の支援状況

日本は、様々な形で発展途上国の支援に取り組んでいます。 実際に行っている日本の発展途上国への支援について紹介します。ODAを中心とした財政支援の現状や、民間セクターとの連携によるビジネス支援など、日本ならではの支援の特徴に焦点を当てて解説していきます。

ODAを中心とした財政支援の現状

日本は、政府開発援助(ODA)を通じて、発展途上国の支援に積極的に取り組んでいます。2023年の日本のODA実績は、約19.6億ドルで、世界第4位の援助国となっています。(※16)日本のODAは、二国間援助と国際機関を通じた多国間援助に分類されます。二国間援助では、有償資金協力(円借款)と無償資金協力、技術協力が主な支援形態です。

円借款は、発展途上国に対する長期、低利の資金貸付であり、インフラ整備や経済開発などに活用されています。無償資金協力は、学校や病院の建設、医療機材の供与など、発展途上国の基礎生活分野の改善に役立てられています。技術協力は、専門家の派遣や研修員の受け入れを通じて、発展途上国の人材育成を支援しています。多国間援助では、国連開発計画(UNDP)や世界銀行など、国際機関を通じた支援を行っています。これらの機関は、発展途上国の貧困削減や持続可能な開発を推進する上で重要な役割を果たしています。日本は、これらの機関への寄付を通じて、発展途上国の課題解決に貢献しています。日本のODAは、アジア地域を中心に幅広く展開されています。特に、ASEAN諸国やバングラデシュ、スリランカなどの南アジア諸国に対する支援が重点的に行われています。また、アフリカ地域に対しても、TICAD(アフリカ開発会議)を通じた支援を強化しています。

民間セクターとの連携によるビジネス支援

日本は、ODAを通じた財政支援に加え、民間セクターとの連携によるビジネス支援にも力を入れています。官民連携(PPP)の枠組みを活用し、日本企業の海外進出を後押しすることで、発展途上国の経済発展と日本経済の活性化の両立を目指しています。その代表的な取り組みが、「質の高いインフラ輸出拡大イニシアティブ」です。このイニシアティブは、日本の高い技術力を活かしたインフラ整備を通じて、発展途上国の経済、社会開発を支援するものです。日本政府は、日本企業によるインフラ輸出を支援するため、資金援助や貿易保険の提供、現地情報の提供などを行っています。また、JICAの「民間連携事業」も重要な存在であり、この事業は日本企業の海外ビジネスを支援することで、発展途上国の課題解決に貢献することを目的としています。

具体的には、日本企業が持つ製品、技術、ノウハウを活用した現地でのビジネス展開をJICAが資金面、技術面でサポートしています。さらに、日本政府は発展途上国のビジネス環境改善にも取り組んでいます。投資協定の締結や、現地の制度、規制の整備支援などを通じて、日本企業が安心して海外ビジネスを展開できる環境づくりを進めています。このような取り組みは、発展途上国のニーズと日本企業の強みをマッチングさせることで、互いに恩恵を受け、経済発展に貢献しています。また、日本企業の海外進出は、現地での雇用機会を増加させることや技術移転にもつながり、発展途上国の持続的な経済成長に貢献しています。

個人ができる発展途上国に対する支援・私たちにできること

発展途上国の支援は、政府や国際機関だけでなく、個人レベルでも行うことができます。私たちが個人でできる支援として、以下でご紹介します。

まず、発展途上国の現状や課題について理解を深めることが重要です。貧困や教育など、発展途上国が抱える問題に関心を持ち、その国の現状について知ることが第一歩となります。新聞やテレビ、インターネットやSNSなどを通じて、発展途上国の状況を知る努力をしましょう。次に、発展途上国の商品を購入することも、支援の一つの方法です。フェアトレード商品や、発展途上国で作られた手工芸品などを選ぶことで、現地の生産者の収入向上に貢献することができます。また、発展途上国への旅行は現地の経済を支える上でも有効ですが、旅行の際は現地の文化や習慣を尊重し、環境に配慮した行動を心がけることが大切です。さらに、NGOやNPOが行う支援活動に参加するのも良い方法です。発展途上国の教育支援や医療支援などを行うNGOに寄付をしたり、ボランティアとして活動に参加したりすることで、直接的な支援活動を行うことができます。自分の関心に合った団体を探し、できる範囲で関わっていくことが大切です。

発展途上国に関するよくある質問

以下に、発展途上国に関する質問を5つピックアップしました。読者の方の疑問が少しでも解決しましたら幸いです。

Q1. 発展途上国とは具体的にどのような国を指すのですか?

A. 発展途上国は、先進国と比べて経済発展の水準が低い国を指します。国連の分類では、1人当たりのGNI(国民総所得)が一定の基準以下の国が発展途上国とされています。主にアジア、アフリカ、中南米の国々が該当し、具体的にはインド、バングラデシュ、ケニア、ウガンダ、ボリビアなどが挙げられます。ただし、発展途上国の中でも経済水準には差があり、一概に同じグループとして扱うことはできません。

Q2. 発展途上国が抱える主な問題は何ですか?

A. 発展途上国が抱える主な問題は、貧困、教育、保健、インフラの未整備などです。多くの発展途上国では、十分な収入を得られない人々が多く、基本的な生活ニーズを満たすことが難しい状況にあります。また、教育や医療サービスへのアクセスが限られ、識字率や平均寿命が低い傾向にあります。電力や交通、上下水道などのインフラ整備も遅れており、経済活動や生活の質の向上を阻む要因となっています。

Q3. 発展途上国の支援にはどのような方法がありますか?

A. 発展途上国の支援には、大きく分けて政府開発援助(ODA)と民間セクターによる支援の2つの方法があります。ODAは、先進国政府が発展途上国に対して行う資金や技術の支援で、二国間援助と国際機関を通じた多国間援助に分けられます。民間セクターによる支援は、企業のCSR活動や、NGO・NPOによる支援プロジェクトなどが含まれます。個人レベルでは、寄付やボランティア活動への参加、フェアトレード商品の購入などを通じて、発展途上国の支援に関わることができます。

Q4. 発展途上国の自立を促すにはどのような支援が効果的ですか?

A. 発展途上国の自立を促すためには、一時的な資金援助だけでなく、長期的な視点に立った支援が重要です。具体的には、教育や職業訓練を通じた人材育成、生産基盤の強化や産業の多角化を促す支援、制度・政策面での改革支援などが挙げられます。また、現地のニーズを踏まえ、現地の主体性を尊重した支援が求められます。支援する側と支援を受ける側が対等なパートナーシップを築き、互いの強みを活かしながら、持続可能な開発を目指すことが大切です。

Q5. 発展途上国支援の課題は何ですか?

A. 発展途上国支援の課題は、支援の効果を持続的なものにすることです。支援が一時的なものに終わらず、発展途上国の自立的な発展につなげるためには、長期的なコミットメントが必要です。また、支援内容が発展途上国のニーズに合っていない場合や、現地の文化や社会構造を十分に理解していない場合、支援の効果が限定的になることがあります。加えて、支援が特定の地域や分野に偏ることで、格差が拡大する懸念もあります。支援の効果を最大化するためには、きめ細やかなニーズ把握と、バランスの取れた支援が求められます。

まとめ

本記事では、発展途上国の定義や特徴、支援の現状や支援方法について詳しく解説してきました。発展途上国は、経済発展の水準が低く、貧困や教育、医療、インフラなどの課題を抱えています。地域別のランキングを見ても、アジアやアフリカの国々が多くを占めています。インドや中国のように高い経済成長を遂げている国もありますが、国内の所得格差や地域間格差、環境問題など、持続可能な開発に向けた課題が山積みです。日本は、ODAや民間セクターとの連携を通じて、発展途上国の支援に取り組んでいます。しかし、発展途上国の自立を促すためには、国際社会全体で長期的な視点に立った協力が不可欠です。一人一人が発展途上国の現状を理解し、できる範囲で支援に積極的に関わることが、心に留めておく必要があるでしょう。

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