ally(アライ)とは、LGBTQ+をはじめとする性的マイノリティを理解し、支援の姿勢を示す人のことです。近年、日本でも企業や学校を中心にその存在が注目され、社会的な広がりを見せています。アライであることのメリットは、当事者が安心して自分らしく過ごせる環境づくりに貢献できる点です。
一方で、知識不足のまま善意で行動すると誤解や無自覚な差別につながる可能性があるというデメリットも存在します。本記事では、アライの意味や役割、実践例を整理しながら、その意義を考えていきます。
ally(アライ)とは?

近年、日本でも「ally(アライ)」という言葉を耳にする機会が増えてきました。特にLGBTQ+をめぐる議論や企業のダイバーシティ施策の中で使われることが多く、社会的なキーワードになりつつあります。
アライとは、当事者ではなくても性的少数者を理解し、支援の姿勢を示す人のことを指します。しかし、この用語は単なる流行語ではなく、英語の語源や社会的な背景を踏まえて理解する必要があります。ここでは言葉としての意味から、LGBTQ+における使われ方、日本での定着に至る流れを整理して解説します。
言葉としての「Ally」の意味と由来
「ally」という単語は英語で「同盟者」や「支援者」を意味します。語源はラテン語の「alligare(結びつける)」にさかのぼり、歴史的には国家間の同盟や戦時中の協力関係を表す言葉として広く使われてきました。たとえば、第二次世界大戦で連合国を指す「Allies」もその一例です。この場合の「ally」は軍事的・政治的な結びつきを強調するもので、あくまで国家同士の関係を表しています。
一方、現代で使われる「ally(アライ)」は、戦時用語としての重々しい響きとは異なり、個人や組織が誰かを支援する姿勢を示す柔らかな表現として用いられます。つまり「敵対ではなく協力する立場」を示す点では共通していますが、現在の用法はより日常的で、人と人の関係性に根ざした意味合いを持つのが特徴です。
LGBTQ+における「アライ」の定義
LGBTQ+の文脈で使われる「アライ」は、性的少数者ではない人が、その立場に理解を示し、差別や偏見をなくすために行動する存在を指します。単に「応援する気持ちがある」というだけでなく、その意思を行動や言葉で表明する点が大切とされています。たとえば、職場で性的指向や性自認に配慮した言葉を選ぶ、学校で差別的な発言に声を上げる、SNSで理解を広めるといった行動が「アライ」であることの具体例です。
また、アライは当事者に限られません。従来は「ストレート(異性愛者)」が支援者として名乗るケースが中心でしたが、近年ではLGBTQ+当事者であっても「自分も別の立場を支援するアライである」と表現する場面が増えています。この広がりによって、アライは単なる「支援者」ではなく、共に生きやすい社会をつくる仲間としての意味合いを持つようになってきました。
日本でアライの認知が拡大している背景
日本で「アライ」という概念が広く知られるようになった背景には、SDGs(持続可能な開発目標)や企業のDE&I(ダイバーシティ・エクイティ・インクルージョン)の推進があります。SDGsの目標5「ジェンダー平等を実現しよう」や目標10「人や国の不平等をなくそう」は、性別や性的指向による差別の是正を重視しています。この流れの中で、行政や企業がアライの存在を社会に広めるようになりました。
具体例として、東京都は「TOKYOアライプロジェクト」を通じ、アライを可視化する活動を推進しています。
また、埼玉県や大阪府などでも、アライを増やすためのハンドブック配布や研修が進められています。企業でもジョンソン・エンド・ジョンソンやP&Gといった外資系を中心に、アライ研修やバッジ配布、相談窓口の設置などが行われ、社内文化としての定着が進んでいます。
こうした取り組みにより、日本社会でも「アライであることを表明する」行動が少しずつ浸透しています。単なる自己表現ではなく、安心して働き、学び、生活できる環境を整えるために、アライは社会全体で共有される重要な役割となりつつあるのです。
「ally(アライ)」という言葉は、もともと「同盟者」や「支援者」を意味する一般的な英語でした。それがLGBTQ+の文脈に取り入れられることで、「性的少数者の味方」としての意味が強調されるようになりました。さらに、日本ではSDGsや企業のダイバーシティ推進の流れと重なり、行政や教育機関を通じて広がりを見せています。
アライは単なる理解者ではなく、共に社会を変えていく仲間という位置づけを持つようになってきました。この視点を持つことが、誰もが安心して暮らせる社会づくりの第一歩になるといえるでしょう。
参考:東京都プレスリリース 2024年3月29日
参考:東京都のアライマークについて|3月
アライが支援する性的マイノリティとは
アライ(ally)は、LGBTQ+と呼ばれるさまざまな性のあり方を持つ人たちを理解し、支援する存在です。ここではまず、性的マイノリティの基本的な区分や用語を整理し、アライが支える人たちの範囲を明確にしましょう。性自認と性表現の違い、性的指向とアイデンティティの多様性、当事者が直面する困難について順に解説します。
性自認と性表現の違い
性自認 | 性表現 | |
---|---|---|
意味 | 自分が心で感じる性 | 外に向けて示す性のあり方 |
キーワード | 「心の性」 | 「外に出す性」 |
例 | 自分は女性だと感じる | 女性的な服装や髪型を選ぶ |
決まる要素 | 内面的な感覚 | 行動・服装・言葉づかいなど |
一致の有無 | 身体や表現と一致しない場合もある | 性自認と異なる表現をすることもある |
まず、「性自認(せいじにん)」とは、自分がどの性別だと感じているかという「心の性」を指します。一方、「性表現(せいひょうげん)」は、言葉づかいや服装、しぐさなどを通して、自分の性をどのように社会に示すかという「外に出す性」です。
たとえば、身体は男性でも、本人は女性だと感じている場合は「性自認が女性」ということになります。そして、髪型や服装などがその認識に合わせているかどうかは性表現によってわかります。性自認と性表現は必ずしも一致せず、人によって違いがある点が重要です。
性的指向と多様なアイデンティティ
「性的指向(せいてきしこう)」とは、どの性別の人に恋愛や性的関心を抱くかということです。誰を好きになるかは人それぞれで、異性が好きな人もいれば同性や複数の性別に惹かれる人がいます。そして「アイデンティティ」は、自分がどのような性のあり方にあてはまると認識するか、その「自認」や「指向」が含まれます。
LGBTQ+はその代表的な略語で、Lはレズビアン(女性同性愛者)、Gはゲイ(男性同性愛者)、Bはバイセクシュアル(両性愛者)、Tはトランスジェンダー(身体と性自認が一致しない人)です。さらに、Qはクエスチョニング(性を定めない/揺れ動く人)、+はそれ以外の多様な性を含むことを示しています。
他にも、アセクシュアル(誰にも恋愛感情を抱かない人)、ノンバイナリー(男性・女性の枠に当てはまらない人)など、多様な性のあり方があり、人々の性はグラデーションとしてとらえられます。
性的マイノリティの当事者が直面する課題
性的マイノリティの人たちは、見た目や言葉ではわかりにくい場合が多いため、周囲に理解されないまま孤立するケースが少なくありません。また、職場や学校などで偏見や差別に直面すると、自分を表明しにくくなる傾向があります。
たとえば、性的指向や性自認を誰にも話せずに悩む人が多く、カミングアウトによって安心できる環境が得られる一方、それができないことで精神的な負担を抱えることがあります。こうした状況に対して、アライの存在は大きな支えとなります。
性的マイノリティとは、性自認や性的指向、性表現において少数派にあたる人たちです。LGBTQ+をはじめ、多様なアイデンティティの人々が含まれ、誰かの見た目だけで判断できない場合が多くあります。彼らが安心して暮らせるように支えるのがアライであり、そのためには性自認の内面と、外に出す性の違いを理解し、偏見や差別のない社会を目指す態度が求められます。
参考:カオナビ
参考:Ally/アライとは?【LGBTQの支援者】意味を解説 – カオナビ人事用語集
なぜ今、アライの存在が求められるのか
社会の変化と学びの広がりを背景に、性的マイノリティへの理解や支援がますます重要になっています。アライは、単に理解者という立場にとどまらず、当事者を支えたり偏見を減らす力を持つ存在です。ここでは、とくに「当事者に安心感を与える存在」「偏見や差別の改善」「企業・自治体の活用事例」という視点から、アライの必要性を見ていきましょう。
当事者に安心感を与える存在としてのアライ
アライは、「自分を理解し支えてくれる人」という意味合いを持つ、非常に大きな存在です。性的マイノリティの当事者は、周囲の反応を気にして自己開示(カミングアウト)に慎重になることが多く、孤立感や不安を抱えがちです。そのような中で、言葉や行動で自分の存在を肯定してくれるアライがいると、安心感が生まれます。
埼玉県では、「性的マイノリティを理解し支援する人」としてアライの存在を明確に位置づけ、その輪を広げるために動画や交流会、支援ハンドブックなどを通じて啓発活動を進めています 。こうした取り組みは、当事者の「一人ではない」という安心感づくりに貢献しています。
偏見や差別の是正に貢献する役割
偏見や差別は、教育や職場、家庭など身近な場面で繰り返されることがあります。それを止める力となるのが、アライの存在です。職場ではアライがきっかけとなって、言葉遣いや制度の見直しが進みます。JobRainbowではアライが、言葉づかいを見直すことで伝わる思いが変わることを強調しています。
たとえば、「お嬢さん・息子さん」ではなく「お子さん」、「男らしい・女らしい」という表現を避け「○○さんらしい」と伝えるなど、誰でも実践できる配慮を広げています 。こうした態度の積み重ねが差別的な雰囲気を和らげ、誤解や偏見を減らす大切な第一歩になります。
企業や自治体での活用事例
アライの取り組みは、個人の行動を超えて組織単位でも進んでいます。たとえば自治体では埼玉県がアライを推進する自治体として、職員研修、ステッカー配布、大学連携など多角的な施策を展開中です 。企業の領域でも広がりが見えています。JobRainbowの情報によれば、LGBTQ+フレンドリーな企業では研修や制度づくりが進み、アライとしての価値観を組織文化に組み込んでいる例があります 。
こうした企業は制度面だけでなく、啓発や相談窓口の整備などのソフト面にも力を入れています。たとえば日本航空では、アライ研修や社内相談窓口、ステッカー配布など多様な支援を職場に根付かせています。
現在の社会では、性的マイノリティの方々が安心して暮らせる環境づくりが進む中、アライの存在が欠かせない役割を果たしています。アライがそばにいること自体が当事者にとって心理的な安心を与えるとともに、言動を通じた配慮が偏見や差別を和らげていく原動力になります。さらに、自治体や企業が積極的にアライを支援する仕組みを整えることで、社会全体の包摂力が高まっていきます。「支える」意思を持つアライが増えることは、誰もが暮らしやすい社会をつくる第一歩になっていくでしょう。
参考:アライ(ALLY)の取組 – 埼玉県
参考:アライ(Ally)とは?【LGBTQでなくても、今日から活動できる】 | LGBT就活・転職活動サイト「JobRainbow」
アライとしてのふるまい方・行動例
アライとして日常でできる行動は、小さな気づきの積み重ねから始まります。大切なのは「特別な人だけがすること」ではなく、誰もが安心して暮らせる社会を目指し、自分のできることを一歩ずつ実践することです。ここではまず、偏見を助長しない言動への配慮、カミングアウトを強要しない姿勢、そして継続的な学びの必要性という三つの観点で、具体的な行動例を紹介します。
偏見を助長しない言動への配慮
アライとしてまず心がけたいのが、言葉や態度によって偏見を広めない配慮です。たとえば、滋賀県立男女共同参画センター「G-NETしが」では、性の多様性に配慮し、「ホモ」「オカマ」「レズ」などの差別用語を使わないこと、当事者を笑いものにするような言動を見かけたら「よくないことだ」と指摘すること、そして性別を決めつけるような質問を避けることなどの行動が推奨されています。
たとえば「彼氏(彼女)はいるの?」と聞くのではなく、「恋人はいる?」と尋ねるようにすると、相手のプライベートを尊重しつつ安心感を与えられます。無意識の表現が相手を傷つける場合があるので、日常から言葉の使い方に配慮することが重要です。
カミングアウトを強要しない態度
カミングアウトとは、性的指向や性自認など個人の性のあり方について、自分の意志で他者に打ち明けることです。しかし、これは本人が安心できるタイミングで行うべきものです。滋賀県の資料でも、他人が強要したり、本人の同意なく第三者に伝える「アウティング」は、人権侵害につながる重大な行為とされています。
そのため、誰かがカミングアウトした際には、本人の話を最後までじっくり聞き、その信頼を裏切らない配慮が必要です。相手が話すことを選んだタイミングや範囲を尊重し、安心して打ち明けられる関係を築く姿勢こそが、アライとして大切な態度です。
LGBTQ+関連情報の継続的な学び
性の多様性に関する理解は、学びによって深まります。G-NETしがは「多様な性について学ぶ」ことをアライの具体的な行動例として挙げており、理解を深める第一歩として推奨しています。
また、Work With Prideの「PRIDE指標」でも、企業が社内外で継続的な研修やイベントを通じて、アライの意識を育てることが評価される指標となっています 。これは「一度だけの研修」ではなく、定期的に取り組むことが推奨されている点がポイントです。
たとえば社内でLGBTQ+に関する勉強会を定期開催したり、公的な講座やウェビナーに参加することが挙げられます。書籍を読む、ドキュメンタリーを視聴するなど、日常に学びの機会を取り入れる工夫も大切です。こうした学びを個人だけでなく、職場やコミュニティの中に広げていくと、より理解の輪が広がります。
アライとしてのふるまいは、特別な行動ではなく、日常の言葉遣いや態度、学びの積み重ねです。まずは言葉に気をつけて偏見を助長しない配慮をすること、相手のカミングアウトを尊重する姿勢を持つこと、そして継続的に学び続ける意欲を持つこと。この三つを意識することで、誰でも身近なところからアライとして支援できる存在になれます。
参考:「ALLY(アライ)」ってなに?~多様な性への理解を深め、行動しよう~|滋賀県ホームページ
参考:アライについて – work with Pride
アライの取り組み事例と比較
アライ活動は、職場や地域、学校など、さまざまな場で具体的に展開されています。ここでは国内の代表的な事例を、表で目的や対象、成果を整理し、比較することで、それぞれの取り組みが持つ意味や特徴をわかりやすく示します。続いて、それをふまえた解説も加えます。
組織名 | 取り組み内容 | 対象者 | 成果 |
---|---|---|---|
伊賀市 | ALLYステッカー配布(市役所や学校、事業者向け)・相談窓口設置 | 市役所、学校、市内企業・店舗、性の多様性を理解したい市民 | アライの可視化、相談を受けやすい環境づくりが進行 |
埼玉県 | アライ推進セミナー、大学連携プロジェクト | 企業関係者、大学、行政、地域住民 | 当事者の声を共有する機会を創出し、理解促進につながった |
東京都 | 支援者のインタビュー公開、市民向け啓発 | 市民、企業、教育関係者 | 日常的な理解を深める情報発信により安心感が拡大 |
企業のアライ施策事例(例:ジョンソン・エンド・ジョンソン)
ジョンソン・エンド・ジョンソンでは、社員の自主的なネットワークを通じた理解促進と、プライドイベントへの参加など、社内外でアライ活動を推進しています。結果として「PRIDE指標」で高評価を得るなど、職場文化への浸透を実現しており、制度と文化の両面で効果を上げています。NECでもアライ相談窓口や従業員リソースグループ(ERG)が活動し、相談しやすい仕組みを整備しています。
自治体の啓発活動(例:埼玉県・東京都)
埼玉県では、企業や行政、教育関係者が一堂に会する「アライ推進セミナー」や大学との連携プロジェクトを通じ、具体的な実践や意見交換を促す活動を行っています。このような取り組みが社内だけにとどまらず、地域社会にも広がるきっかけとなっています。
東京都は、LGBTQ+支援者のインタビューや活動の紹介を通じて、市民意識に働きかける情報発信を行っている点が特徴です。これによって、職場や家庭など日常生活の中でアライの存在が見えやすくなり、安心感が広まっています。
教育機関のアプローチ
教育現場では、自治体や教育委員会が作成した指導案や教材を活用して、多様な性を伝える授業や掲示活動が広がりつつあります。たとえば、先生向けの実践事例集などが公開され、具体的な授業プランとして利用可能です。
また、GLSEN(米国の教育団体)が提唱する「アライウィーク」は、国内の大学でも採用されつつあります。学生と教職員が連携し、LGBTQ+の当事者が安心して活動できる場づくりを目的としたイベントを開催しています。
比較表と解説を通じて、アライ活動の多様な形が見えてきます。伊賀市のように「見える形」で可視化する自治体、埼玉県のようにセミナーで主体間のつながりを作る自治体、東京都のように市民の意識に訴える情報発信など、それぞれが地域に根づいたアプローチを展開しています。
企業では制度と文化の両立を図り、教育現場では将来を担う世代への理解促進に力を入れています。どの場面でも共通するのは「安心して自分らしくいられる環境を整える」こと。これらの事例を参考に、自分の身近な場でできるアライの行動を考えるヒントとしていただければ幸いです。
参考:伊賀市はALLY(アライ)の取り組みを進めています
参考:TOKYO ALLY | 性的マイノリティに関する企業向けポータルサイト
SDGsにおけるアライの意義
アライの活動は、SDGs(持続可能な開発目標)の実現に大きな役割を果たしています。特に「目標5:ジェンダー平等を実現しよう」と「目標10:人や国の不平等をなくそう」とは深い関わりがあります。ここでは、それぞれの目標とアライ活動の関係、そして社会全体に与える影響について整理します。
SDGs目標5「ジェンダー平等を実現しよう」とアライの関係
SDGs目標5は「ジェンダー平等を達成し、すべての女性と女児のエンパワーメントを図る」ことを掲げています。この目標は女性に限らず、性別に関わるあらゆる差別をなくすことも含んでいます。アライは、LGBTQ+を含む多様な性の在り方を尊重し、偏見をなくす行動をとることで、目標5の実現に寄与します。
例えば、職場での昇進や採用における性別の固定的なイメージを取り除くことは、女性だけでなく性的少数者にとっても平等な機会を保障することにつながります。アライが率先して「誰もが能力で評価される職場づくり」を支えることで、組織全体の意識改革が進み、SDGsの理念を日常的に体現することが可能となります。
SDGs目標10「人や国の不平等をなくそう」とアライの関係
SDGs目標10は、所得や教育、雇用、社会参加など、さまざまな場面での不平等をなくすことを目指しています。性的少数者は、いまだに法制度や社会的認知の面で不利益を受ける場面が少なくありません。たとえば、同性カップルが結婚制度にアクセスできないことや、学校でのいじめ、職場での差別的な発言などが挙げられます。
アライがこうした状況を理解し、声をあげることは、制度の見直しや地域社会での不平等の是正を後押しします。具体的には、企業でのダイバーシティ施策における意見表明や、自治体における相談体制づくりの推進に寄与することが考えられます。このような取り組みは、目標10の「格差を減らす」という趣旨に直接的につながります。
社会全体の包摂性とアライの役割
SDGs全体の理念は「誰一人取り残さない社会」の実現にあります。そのためには、性的少数者だけでなく、多様な背景を持つ人々を含めた「包摂的な社会づくり」が欠かせません。アライは、当事者と非当事者をつなぐ架け橋となり、安心して生活できる環境を広げる役割を担います。
日常的な小さな行動、たとえば差別的な発言に対して注意を促すことや、理解を深める学習を続けることが、社会全体の空気を変えていきます。こうした動きが波及すれば、学校、職場、地域社会のあらゆる場面で多様性を受け入れる基盤が築かれ、持続可能で調和の取れた社会に近づきます。
SDGsにおけるアライ活動の意義は、目標5の「ジェンダー平等」と目標10の「不平等の是正」に直結しています。そしてそれは、特定の人々を支援するだけでなく、社会全体をより公正で包摂的なものに変える力を持っています。アライが一人ひとりの立場でできることを積み重ねていくことこそが、持続可能な未来を築くための大切な一歩なのです。
ally(アライ)に関するよくある質問
ここでは、アライに関してよく寄せられる疑問をまとめました。理解を深めるきっかけとして、実生活に役立つ視点を提供します。
Q1. アライとは当事者でなければなれないのですか?
アライは必ずしも当事者である必要はありません。むしろ、多くのアライは性的マイノリティではなく、「理解し、支援しようとする人」を意味します。つまり、自分が異性愛者やシスジェンダー(出生時に割り当てられた性と自認する性が一致している人)であっても、周囲の人を尊重し、差別をなくす行動をとることがアライ活動です。
例えば、友人が安心して話せる環境をつくったり、職場で差別的な言葉に異議を唱えることも立派なアライの行動です。当事者でなくても関わることができる点が、アライ活動の広がりを支える重要なポイントです。
Q2. アライを名乗るには資格や特別な認定が必要ですか?
アライになるために資格や免許は必要ありません。基本的には日常の中で「理解しようとする姿勢」と「差別をしない言動」を意識すれば、誰でもアライといえます。ただし、企業や自治体によっては研修や講習を受けることで「アライ認定バッジ」や「ステッカー」が配布されることもあります。
これらは目に見える形でアライであることを示すツールであり、周囲に安心感を与える効果があります。しかし、形式的にバッジを身につけるだけでなく、日常の行動で信頼を築くことが何よりも大切です。
Q3. アライとして意識すべき言動にはどんなものがありますか?
アライが最も意識すべきは、無意識の偏見を避けることです。例えば「男らしさ」「女らしさ」といった固定観念を押しつけたり、恋愛対象を当然のように異性と決めつけたりすることは、当事者にストレスを与えます。また、「いつカミングアウトするの?」といった質問も本人に負担をかける可能性があります。
一方で、正しい知識を学び続ける姿勢はアライとして重要です。セクシュアリティに関する言葉の意味は日々アップデートされています。誤解のない表現を心がけ、相手が安心して会話できるよう配慮することが、信頼を築く第一歩です。
Q4. アライ活動はどんな場面で役立ちますか?
アライの存在は、学校や職場、地域社会など幅広い場面で力を発揮します。学校であれば、いじめや差別的発言を防ぐ役割があります。職場では、性的指向や性自認に関わらず働きやすい環境づくりを支えます。地域社会でも、啓発イベントや相談窓口の周知に関わることで、多様性を認める空気を広げることができます。
具体例として、企業の多くは「ダイバーシティ研修」を導入し、アライを増やす取り組みを進めています。また、自治体では「パートナーシップ制度」を導入し、アライの支援を背景に制度利用者が安心して生活できるよう工夫しています。このように、アライ活動は個人のレベルから社会全体の仕組みづくりまで幅広く役立ちます。
Q5. アライ活動は一人でも効果がありますか?
もちろん、一人からでも始められます。日常で差別的な言葉を聞いたときに「それは不適切では?」と声をあげるだけでも、周囲の空気を変えるきっかけになります。また、SNSで信頼できる情報をシェアしたり、イベントに参加したりすることも立派な行動です。
アライが増えることで、当事者は「自分は一人ではない」と実感できます。そして一人の行動が周囲に波及し、次第に多くの人がアライとしての役割を果たすようになるのです。数が増えれば、社会の中で安心して過ごせる場が広がり、制度や法律の改善につながる動きも加速していきます。
アライは特別な資格を必要とせず、誰でも日常の中で実践できる存在です。当事者でなくても支援することができ、学校や職場、地域社会において大きな影響を与えます。大切なのは「学び続ける姿勢」と「相手の立場に立った行動」です。一人の行動は小さく見えても、その積み重ねが社会全体の変化を生む原動力となります。
まとめ
アライとは、LGBTQ+をはじめとする性的マイノリティを理解し、支援する人々を指します。当事者でなくても誰もが担える役割であり、学校や職場、地域社会など幅広い場面で必要とされています。アライの存在は、安心できる環境をつくり、差別や偏見を減らす力となります。
さらにSDGsの目標とも重なり、社会の包摂性を高める重要な要素です。一人の小さな行動から社会を変える大きな流れが生まれることを意識し、学び続ける姿勢を大切にしましょう。